岡田耕さんの句集「父に」を読ませていただきました。
2024/08/21
十河 智
岡田耕さんの句集「父に」を読ませていただきました。岡田耕治さんが主宰の俳句誌「香天」の購読会員ですので、句集を手にすることができ、とてもうれしく思いました。
暮らし、日常を飾り気のない差し引きゼロの言葉を使い、五七五の中に納めていると感じました。
今日の顔定めていたり冬帽子
スカーフの春を捩つて結びおく
隣人は生きているらし木守柿
本は詰め雑誌は括る二月尽
姿なしこの紫陽花を活けし人
自然と交錯する幸せな人の営みが描かれ、共感がありました。
まんさくの人を笑顔にする笑顔
紫陽花の描かれてゆく水の音
大学を好きになりたる落ち葉かな
ときめきのように現れ石蕗の花
フルートを吹く直前の虫の声
句意について、読み返し、深く考えさせられるものがありました。
永遠の今をひろがる夕桜
自らの重みを落ちる海鼠かな
一生を一日とする大西日
夏物のスーツを曝し父の恩
没年であり生年を送りけり
大好きな一句を揚げると
たんぽぽのひととき奈良に居るという
(タンポポも好き、奈良も好きという私には、この句にあるのんびりとした時間を満喫している人をうらやましく思う。)