歌代美遥さんの句集「ひらひらと」 を読ませていただきました。

歌代美遥さんの句集「ひらひらと」

を読ませていただきました。

        2023/11/14

        十河 智

 

 歌代美遥さんの句集、「ひらひらと」を、お贈りいただき、読ませていただきました。

 装丁の上品な色合い、優しい、光に包まれた明るさのある句集だと思いました。美遥さんのお人柄そのままの。

 実は、もっとお若い方と思っていました。1946年12月生まれの私とほぼ同じ年齢に少し驚いています。

 

 帯の一句、

 

 真四角の水のかたちや水中花

 

 真四角の水の形、にも懐かしさがあります。十代の頃か、それとももっと後だったか、そういえば、という心当たりがあるのです。流行りというか、私も、真四角の水の形の中に水中花をわくわくしながら広げて行ったことを思い出すのです。

 

 現在の心境としての一句

 

 夫より少し生きたし春の星

 

 この句も、泣きたくなるほど、私の気持ちと重なりました。もうこの年になると人生は平均値では語れない、現実味があります。幸せな二人の暮らしと相俟って、「一人の自由」への憧れも、少しはあるのです。

 

 

「初蝶の風」

 

 ゆく末を語り春菊茹でにけり

 青き踏む私の脚のまだ若く

 老いいゐても流行りを少し春の服

 鎌倉の山が支うる春の月

 本物になりたき造花遍路宿

 ふらここに一句の思考揺らしをり

 松毟鳥夫の病よ死よ来るな

 

 

「金魚玉」

 

 もう少し長さの欲しき祭髪

 赤四葩紫四葩紀尾井坂

 梅雨明けや座敷膨らむ笑ひ声

 

 

「月浮いて」

 

 がやがやと生き死に語る墓参かな

 ひらがなの案内の手紙敬老日

 

 

「寒紅梅」

 

 道なりに曲がれば冬の無言館

 紅侘助閉店の謝辞貼られけり

 逝く友や冬の牡丹の濡れしまま