ポンカンを持って、義弟が来ました。

ポンカンを持って、義弟が来ました。

        2024/2/24

        十河 智

 

 昨日、お昼すぎに、主人の弟が、故郷、香川産のポンカンの箱を持って突然やって来た。宝塚に所用があって、そこからついでに回ってきたという。義弟の来訪もポンカンの到来も嬉しいことであった。このあたりで手にいれられる兵庫産、和歌山産の柑橘類もいいのだが、やはり香川産のほうが甘い。歳をとってもこうして時時季節の果物を届けてくれる、ありがたいことだ。宝塚は寝屋川がついでに回れるような場所ではない、兄貴に食べさせたくて、遠くまで届けてくれたのだ。

 義弟は主人の家の稼業である材木屋を継いでいたが、女の子ばかりで跡継ぎがなく、ついこの間廃業を宣言した。在庫はだいたい処分できたと、この来訪のとき、主人と話していた。私も薬局を整理した経験があるが、在庫を処分するのに結構時間が要ったと記憶しているので、スムーズに事が運んでいるようでよかったと思った。私たちも娘は静岡なので、高松はあまり足が向かない土地になった。長生きしすぎる社会になると、葬式の席で親族が縁を深めるという事も機能しなくなっている。まずうちでも主人は長距離運転をしなくなった。コロナも追い打ちをかけて、きっと寂しいお葬式になるだろう。

 義弟は、もう一軒大阪の従兄弟の家に寄って帰るという。家の商売を継いでくれて、なおかつ、親類付き合いも引き受けてくれている。サラリーマンで核家族のわが家、主人はそこまで気を回さない。

 ポンカンの皮を剥きながら、明日かも知れない人生の最後を思い描く。

 

故郷の山思い出す椪柑来