今回が最後かも知れない。

今回が最後かも知れない。

   2023/07/29

十河 智

 

 もう一週間経ってしまったが、有馬みどりさんのピアノリサイタルに行った。みどりさんのお母様が主人の同級生で、音大を出て、ピアノの先生をなさっていた。15年ほど前の同窓会で、みどりさんの先生の野島稔さんのリサイタルに誘われたのがきっかけで、関係する音楽会にでかけるようになった。残念ながら、お母様は少し前にお亡くなりになって、野島稔さんも最近お亡くなりになったと聞いた。主人と同学年の方たちであり、自分たちに迫る死期を考えさせられる。
 みどりさんのリサイタルの観客層も私達のようにお母様から誘われた人たちよりも、みどりさん自身のお弟子さんなど若い人たちが増えていた。
 あまり大きくない音響に配慮したホールが会場であった。神戸、宝塚の近辺で、50人ほどの椅子席が設えられた会場、このあたりには結構多いようである。毎回違うところでこのリサイタルは行われる。
 今回は午後のコンサートだったのと、会場近くに有料の駐車場があると、チラシにも書いてあったので、車で神戸まで行くことにした。主人はもう夜の運転は疲れるらしく、帰りが遅くなる遠出は、しないか、電車ということが多くなった。この時間帯に開演はとてもありがたい。
 演奏に年輪と言うか年相応の深みがあるように感じた。私は演奏そのものが記憶に残る質ではなく、その場限りの観客に過ぎないのだが、音楽が立ち上げるその場の空気感は、体が受け止めて覚えているように思う。本当の栄養になるリフレッシュ効果があると思う。演奏者から最も近いこの形は観客の方も選ばれるかも知れないが、和やかでいいものである。
 みどりさんのリサイタルは、これからも続くだろうが、私達が聴きに行けるのは、今回が終わりなのかも知れないなと、感慨も覚えながら聴き入った。
 こうして、長く慣例化している催事から、身を引くことが多くなった。 帰省するつもりであったが、もう同窓会は世話役もいない。寂しいが、これが人生だろう。諦めも大事と自分に言い聞かせて暮らす。

子の世代円熟味増し夏盛ん
コンサート終えて夕焼雲の中
盆帰省同窓会はひらかれず