戦争が起きつつある世界

戦争が起きつつある世界

        2022/04/30

        十河 智

 

 ネットニュースで見たロシアの土豪の中で母親にスマホでラインする若き兵士が忘れられない。

「母さん、僕は今戦争している。」

 いいところへ行くと連れてこられたところが戦場だったらしい。この話は戦争が始まった頃見たものだが、つい最近も、似たような話題を、テレビのワイドショーが取り上げていた。

 一方のウクライナでは、女子供だけが避難、男は兵士として、国に残るという。

 両国の勢力の大きさの詳細は知らないが、どう見てもロシアのほうが巨大に見える。しかし士気が規模に比例しているようには思えない。

 この戦争はどういう結末を迎えるのだろう。仲介にトルコや国連が名乗りを上げた。良い方向に進むことを祈るばかりだ。

 日本は、ロシアと国境も接しているし、北方領土の交渉事もあり、漁業交渉もある。他人事ではないという投稿がSNSに上がっていた。のんびりと。戦争を知らない子供たちと高を括っている場合ではなさそうだ。テレビニュースは、ロシアが北方領土で始めた軍事演習を伝えている。唾をつけ始めている、ロシア。日本はどうすればいいのか。これ以上は考えたくない私がいる。

 核兵器も抑止力だとお互いに言ってきていたものが、ロシア、プーチンによって、突如崩されそうになってきている。今にも使いそうなコメントが発表されたのだ

 五十年も前に、大学の若き原子力の研究者が部活クラブの仲間だった。その彼が心配げに言った言葉を思い出す。

 

 「自分の研究の成果は平和利用と信じているけれど、もしも核弾頭に利用されたら、どうしよう。」

 

 最後のボタンを押す決定権、判断は人にある。その時は現実離れしていると思っていたことが、いま起きようとしている。

 なんの力も持たない、起きてしまったら、状況下に身を委ねるしかない我が身。恐ろしいが、この時代に生きる、ある種の覚悟はできてきている。あの若き兵士と何も変わらないのだ。皆、地球人。運命共同体。そして、なるようにしかならない運命。ボタンを押す人にだって命の保証はないのだから。そういう兵器を人は作ってしまったのだ。

 避難民になるか犠牲者になるかしかなく、大多数の人は選択すらできない。

 ああ、このまま平穏無事に死んでゆきたいものだ。

 

戦争を知らず逝きたし春の潮

若者は戦場(いくさば)春の土被り

我もまた住まふ地球や蜃気楼

核のボタン押す現実味蘖ゆる

春風に火薬の臭ひ微かあり     十河 智