医療逼迫と境界線

医療逼迫と境界線

        2020/12/13

        十河 智

 

最近聞いたコロナウイルス感染症の対応裏話。

 姪は、人工透析をしている医院の受付をしている。久しぶりの電話だったので、何気なく、「コロナはどう?近づいてないか?」と聞いたのだ。
 意外にも、「それが大変なんよ。」と返ってきた。透析患者の一人が若い家族に感染者が出て、濃厚接触者と認定されたというのだ。
 コロナ感染患者自身は入院は何日かできず自宅待機となっていて、透析患者を気遣って、縁者の家に、退避させてもらった様で、その後入院となったという。
 コロナ感染者の住居は大阪市。透析医院は隣接の守口市にある。医院の院長は、自分の患者の感染の有無をできるだけ早く知りたい。だが、大阪市ではPCR検査も待たされる状態なので、そこで、かかりつけ医として守口市内の大阪府のコロナ受け入れ病院でPCR検査をしてもらいたいと、大阪市の担当保健所と掛け合ったらしいが、大阪市内で完結するシステムだと、受けられなかったらしい。何日か判定されないまま、医院は、もしものときと同じ対応で、透析することになり、他の患者の透析が終了後、その患者さん一人と対応ということになり、負担が大きかったという。
 府下でありながら境界線があることにも驚いた。保健所は政令都市である大阪市などは系統が分岐しているとはわかっていたが、実情に対応できていない。この透析患者の感染の有無は即座に知るべき重要事項で、当事者が訴えていたのに、である。

 

 話は飛躍するかもしれないが、この境界線を神戸の震災のときにも感じていた。
 淀川を渡れば平穏に業務を行う大阪があったが、皆しばらくそれに気づかなかった。おそらくは気づく人がいても表面に浮き上がっては来なかった。

橋隔つ大阪日常花キャベツ  

 

 コロナの今に話を戻そう。
 提案があるのに受け入れられない頑なさ、システムにこれを破る方策を用意できないものだろうか。柔らかい臨機応変は、法律にあり得ないのだろうか。
 医療逼迫とよく言われるのだが、日本各地でこういうことがあるのではないだろうか。
 国境のない医師団というのがあるが、府県境、市町境界線までもがコロナ禍に災いしている。これを取り払って、現状に全力で対応しなければいけない。

 この話を聞いてから後、昨日今日のことではあるが、吉村大阪府知事が、府内7大学病院にコロナ患者の受け入れ強化を求めたり、西村大臣のコメントに北海道、首都圏、中部圏、関西圏と、"圏”というより広い範囲を捉えて、対策するとしたり、少し考え方の変化が見られるようにはなって来ている。いい方向に向かえばいいのだが。
 高齢で基礎疾患のある私は家を出るのも最小限にして、テレビを見て過ごしつつ、このまま孫にも子にも会わず、年を越そうとしている。

コロナ禍や戦争に似て開戦日
救急車止める縄張り虎落笛
冬暖か防護服より差し出す手  十河