木津の流れ橋と四季彩館、秋晴れの日に

木津の流れ橋と四季彩館、秋晴れの日に
          2019/09/13

 なんの予定もない日に、晴れ渡る青空があった。久しぶりである。
 予てから、流れ橋を見てみたいと思っていた。
 木津川に架かる上津屋橋の通称である。大きい台風や豪雨による放流のある度に、文字通り流されては、再建されていた。その度に議論が起こる。しかし、去年の台風21号のあと、今回も流れ橋のまま、つい先頃再建されたばかりである。「木津の流れ橋」という名が通り、観光名所でもあるからである。
 昔のイメージで、橋だけで、食事はできないと思い、途中で昼食を取った。
 が、行ってみると、橋の近くに駐車場を備えた四季彩館というレストランや、産直取り立ての市場があり、間の通路から流れ橋への道標が設置されていた。流れ橋の整備、修復、観光の拠点としての施設であるようだ。
 川の方へ行くと、もう秋風であった。それぞれにじっくりと爽やかさや秋の気配を楽しむ人たちが川縁に集まっていた。ベンチや四阿もあり、涼しい秋風と靡く堤の秋草を眺めて、時間を過ごした。川は平穏に流れ、河川敷の畑の秋茄子が光っていた。
 ランニングやサイクリングのコースにしている人たちが走る。
 こんな心が落ち着く場所はあまり記憶になかった。ずっとベンチで風に吹かれていたかった。
 四季彩館への帰り、歴史ある石田神社や、庄屋屋敷の日影の道も、気持ちよく歩いた。風鈴が軒先に吊るされて、よくなり響いていた。
 四季彩館の通路にある自動販売機で、ドリップコーヒーを飲んだが、その温かさが、美味しかった。秋がやっと感じられた。
 レストランはランチバイキングらしい。また女友達を誘ってきてもいいなと思う。
 産直取り立て市場に入った。平日で昼過ぎなので、品数は少ない。醍醐のシャインマスカットというのに興味が湧いて買ってみた。少し皮が固いが、甘さは充分だった。宇治茶のアイスクリーム、地産の無花果も。
 アイスクリームを食べた後、すごく気持ちが落ち着いたので、予定にしていた浄瑠璃寺を回るルートは止めにして、すぐに帰宅した。

秋の雲木津の流れ橋へと誘ふ
りりりんりりん激しく秋の風鈴は
矢印と秋の神社の石畳
秋茄子や堤に走る人がをり
爽やかにサイクリングのヘルメット
四季彩館京都醍醐の葡萄買ふ
自販機のドリップコーヒー秋涼し
無花果の小振りで甘き匂ひかな
秋麗や木津川といふ大看板
清謐の一日(ひとひ)なりけり秋の天
         十河智