孫たちの夏休み滞在日記

孫たちの夏休み滞在日記
          2019/08/25
          十河智



 皆さんのおうちも同じでしょうね。
 お盆にしか移動できない家族が帰ってきます。いつもの静かな二人暮らしが、しばらく賑やかになり、多分頑張りすぎて疲れきるのでしょうが、来る前から祖父母はそわそわ、冷蔵庫を一杯にして待ちます。

孫が来る冷蔵庫まずいつぱいに
ぐちやぐちやと孫が散らかす残暑かな


 今年はすこし長いお盆休みでした。娘一家は、自分達の予定をめいっぱい立てて、やって来ました。若い、行動力に目が回りそうです。
 洗濯と、ご飯の仕度だけは、間違わないよう、間に合うようにしてやりました。パンは食べないご飯好きの弟がちょっと手こずります。物干しハンガーが、もう幼児用では間に合わず、干しては落とすの繰り返し。

パンの子もおにぎりの子も桃が好き
夜濯ぎや幼児用ハンガーより落とし 
汗拭きを肩掛けにして家事二倍


 娘一家の帰省は、今年は早くて8月9日、娘の誕生日は8月7日で、すこしずれるけれど、私の焼くケーキがうまくいかなくて、誕生日ケーキはいつもこの店のものと決めていた懐かしい店のホールケーキを用意しました。孫がイベント好きなので、ろうそくを消させてやろうかなと、四捨五入の大5本のろうそくをいれてもらいました。二日遅れでみんなでハッピーバースディー歌って、ろうそく消して、ケーキカット。
 
立秋や今日は娘の誕生日
初秋や娘もすでに不惑過ぎ
盆休み遅れて祝ふ誕生日


 留守が多いので、昼間は私たちは案外フリーで楽になりました。孫が幼いうちは、預けられて映画館や本屋へ連れて行っていましたが、大きくなって、やることが変わって来ました。もうすぐ相手してくれなくなるんでしょうね。
 男の子を二人育てるのは大変そうです。朝、出掛ける前に、宿題を進めさせたり、お父さんと近所の運動場やバッティングセンターへ野球の練習にもいきます。親が率先して、付き合って、グズグズさせない、体を動かさせる、そんな方針のようです。
 宿題の習字をさせているとき、スマホから手本を出して、見せているのはビックリしました。幼い子には掠れの醍醐味はわからないようで、何枚も書き直していました。

先生に残暑見舞ひを祖母の家
朝の蝉宿題を見る親の声
新涼の空バツテイングの快音
文月やスマホより書の手本出で
涼風至筆の掠れを気にする子


 ある一日は、婿の幼いときに遊んだ高槻の摂津峽の川で、今も飛び込んだり泳いだりできるようで、いとこやお父さんの友達一家と川遊びを楽しんできたりしていました。

今の子と昔の子供川遊び
摂津峽泳ぎ飛び込み涼む場所
夏休み高槻にゐるお友だち


 ある一日は朝早くからお父さんと上の孫は甲子園の高校野球観戦。下の子はお母さんと同じ年頃の子がいるところへお出かけ。3才違いは微妙で付いたり離れたり。
 野球観戦の子に熱中症対策の凍らせたドリンクを三本も持たせていました。同じ野球チームで練習している子がひどい熱中症で、危なかったことがあると言うのです。その子のお母さんが間一髪のところで病院に連れていって助かったそうです。子供は訴えが少なくわからないので、気を付けないといけないようです。
 
熱中症対策麦茶のみ背負ひ
夏帽子並ぶ朝九時甲子園
地元校応援の夏甲子園


 上の子は、撮り鉄になりかけています。親の古いカメラを与えられ、電車やJRの駅に撮りに行きたがります。
 その子が、京都奈良への修学旅行の下見がしたいと言います。どうせ行くのにと思いますが、希望通り上賀茂神社へ行くことにしました。
 おばあちゃん、つまり私は、京阪電車東福寺乗り換えJRで京都駅、そこからバスで上賀茂神社と、京都の大きさや賑やかさがわかり、撮り鉄欲も満たせるコースを設定し、上の子に付き合いました。
この頃は子どもにも小児限定のイコカを持たせていて、切符は買わなくていい。バスもちゃんとそれで乗れる。
 弟の方は、水族館に行きたいと言うので、おじいちゃん、お父さんと車で京都水族館へ行き、お昼ご飯を北大路通りのホルクスで一緒にと約束しました。
 私も京阪電車は久しぶりです。八幡ケーブルが新車両導入が終わり、再開していて、「あかね」「こがね」と、センスあるネーミングとラッピングのポスターが掲げてありました。これは是非乗りに来なくては、と思いました。
 去年の台風被害で今年は花を見に来なかった背割堤、今また最強の台風というのが接近中で、心配です。
 電車に乗ると周囲が見渡せて、気持ちがゆったりします。

撮り鉄の孫と電車に乗りて秋
新ケーブルカーあかねこがねと秋入日
八幡市の背割堤やまた台風  


 京都駅に着きました。小学6年生の撮り鉄君は興奮ぎみ、在来線ホームの屋根の隙間から見える新幹線を撮っていました。
 京都市バスの何番に乗るか、乗り場を聞いて、河原町通りを抜ける上賀茂神社行きに乗りました。市街地では、祇園祭、大文字焼などで相変わらずの外国人観光客で、バスはすし詰めでした。出町柳から北は、市民の足に戻っていましたが。

新幹線眼の端に見て秋日和
京都市バス鮨詰めにして秋暑し
上賀茂と付く町多し秋のバス


 上賀茂神社に着きました。大昔の風情がなく、観光バスが駐車できるように整備され、焼き餅の店も鳥居の前に漬物など土産物屋とならんで整った店になっていました。孫にわらび餅四個入りと焼き餅一個、私も焼き餅一個、ちょっと座れる場所があったので、そこで食べました。
 鳥居を入り、孫は境内を回って写真を撮りに。お父さんから電話があり、水族館はもう終わったので、上賀茂神社まで今から行くと。
 孫が私のところにやって来て、ご朱印を書いてもらいたいとねだります。七、八人並んでいましたが、まだまだ弟たちは来ないと思い、並ばせました。ご朱印帖もここが最初だというので買わせました。
 親にすぐ買ってやると叱られるかなと心配しつつ、「筆で目の前で書いてくれる。」、「神社お寺の雰囲気や違いもわかる。」、「おばあちゃんとの思い出になる。」、いろいろと言い訳めいたことを考えているのが、我ながらおかしい。
 そのうちに大事そうにご朱印をいただいて私のところへ帰ってきました。
 「大事にして、いろんなところで書いて貰いなさいよ。」
 しばらく墨の字や朱印を眺めて、パラパラとご朱印帖を開け閉めしていました。
 家族と合流するまで、いろいろ聞いていると、バスで通り過ぎた上賀茂小と修学旅行中に交流会をする予定と話してくれました。
 起源は違うが、どちらの小学校も「葵祭」というお祭りが地域と深く関わりながら続いており、小学生も何らかの形で参加しているというのが縁だそうです。孫は静岡市内の小学校で葵祭で太鼓を叩いています。
 時代や歴史のバックが違うので、私には結び付かなかったのですが、そんなところから、知識が広がり、二つの時代を知るのもいいなと思います。
 
秋の川祭の牛車通る橋
秋暑し上賀茂小横バスで行く
花葵上賀茂の子と駿府の子
かなかなの神域の杜閑かなり
ご朱印ご朱印を得て秋社 


10
 弟君は、お父さん、おじいちゃんと、私とお兄ちゃんを電車の駅に送った後、車で京都駅近くの京都水族館へ行きました。
 この水族館には、オオサンショウウオとか、琵琶湖に棲息する淡水魚が展示されています。おじいちゃんは入り口前のベンチで本を読んで待っていたらしい。親子でササーっと水族館内を廻ったらしく、私と兄の方が、バスでゆっくりと京都市内を北へ、上賀茂に着いた頃には、もう見終わったと連絡してきました。
 それで、上賀茂神社でも兄にやりたいことをやらせて、私は入り口のわかりやすいところに座って待っていました。おじいちゃん、おばあちゃんは、ペースも興味の持ち方も違うし、いつでも来れます。スポンサーに徹する方がいいのです。一緒に来たことが嬉しいのです。
 3人がやって来ました。弟はオオサンショウウオがいた暗い展示室の話をし、オオサンショウウオがデザインされ、日付と名前を刻印した金のコインを見せてくれました。他の展示の話は一切なしでした。
 駐車場が入りやすくて、気に入りのホルクス北大路店へ食事に行きましたが、移動中も、食事中も、ずっとコインを触っていました。
 昼食後、通りの向こうの植物園へでもいこうかと誘うと、金閣寺へ行きたいと言うのです。今、金閣寺は箔を置き換えてとても美しくなっています。帰り道なので、寄って行くことになりました。
 子どもたちも、大人並みにステーキハンバーグを平らげて、2時頃、一番暑い時間に金閣寺に着きました。
 年寄りは車でクーラーをつけたまま待っていることにしました。最高の人出のようで、夕立の気配もありましたから。
 待つのも疲れかけた頃に、帰ってきました。
 帰りの車の中で、構図もきれいに、カメラを譲り合って、二人の写した金閣寺の写真を見せてくれました。
 実は家に帰ってから、弟の方がオオサンショウウオのコインがないと、大騒ぎになりました。結局大事に鞄に入れてしまっていたとわかったのですが、服のポケット、ソファーの隙間、車の中、あらゆるところを何回も探して大変でした。

山椒魚のみか水族館にをりしもの
金ぴかの記念コインの8・15
肉の皿平らげてゐる日焼けの子
夕立になりさう急ぐ回遊路
親が譲るカメラで秋の金閣寺
秋灯下またポケットを裏返す
秋の夜や大事のコインここにありし

11
 孫の大阪滞在も後一日、今度は奈良へ、婿の家族と行くそうです。
 帰宅後、一日のことを話してくれました。東大寺奈良公園平城宮跡、そして、彩華ラーメン(奈良が一号店)。
 下の子がまだ3才くらいの時、一緒に奈良公園に行ったことがありました。鹿が、大きすぎて、とても怖がったのです。それで、「鹿は怖くなかった?」と聞くと、本人は「怖くない。」と答え、兄が横から「やっぱり逃げていた。」と告るのです。
 東大寺の大きなお堂に驚いたと言っていました。柱の穴を潜ったかと問うと、二人ともやったといいます。誰かが潜りにくそうだったと付け加えて。
 東大寺の僧に書いてもらったご朱印二か所めを、兄の方に見せてもらいました。弟も、東大寺ご朱印帖を買って貰って、ご朱印初めて書いてもらっていました。彼は金糸銀糸の豪華なものを選んでいました。金ぴか好みの子なのです。お坊さんは筆で書くのが上手だったといい、自分の名前も表紙に書いてもらったと見せてくれました。

奈良の鹿再会変はりなく苦手
柱の穴抜けたかと聞く月白に
満月や絢爛豪華ご朱印
墨碩に僧の威厳や月明かり
秋暑し奈良より起こるラーメン店

12
 娘夫婦それぞれ幼馴染み、学生時代の友達とも飲み会、お茶会をし、孫たちも、婿の実家にいとこたちがいて遊ばせ、野球する子には甲子園夏の大会も見せて、予定はほぼ完璧にこなして家に戻る日。帰りには長野の星のよく見える村に一泊して帰る用意もしていました。
 台風はこの間に西の地方を縦断、すこし雨風が強い程度で終わりました。
 出発の時、山にはいるので、運転には気をつけてと、何回も言ってしまいました。

天の川山に持ち込むマットレス
阿智村へ行こう星見に天の川
天の川見上げ天竜川下る

孫往んでコオロギの鳴き始めけり

 後で知ったのですが、私がついこの間訪れた、飯田市の近くが目的地だったようで、天竜川下りもしたそうです。
 孫が帰宅後電話をくれました。
 
天竜川下りずぶ濡れとなる飛沫かな
流れ星見える村へと寄り道す
台風に遇はず帰着と無事電話