道頓堀で観劇、心斎橋まで歩きました。

道頓堀で観劇、心斎橋まで歩きました。
            2019/09/11

 九月九日、道頓堀松竹座に新派の公演を観に行った。
 コープシアターという観劇サークルの例会であるが、都合でグループと離れて、一人であった。家には、植木屋が松の手入れに入っていたが、よろしくとだけ言って、朝九時に出掛けた。激しい雨ばかり続き、延び延びになっていたのが、ようやく来てくれていた。
 11時開演なので、早めにつくようにと思ったが、大阪メトロでは、エレベーターの位置がわからず、階段をえっちらこっちら、地上に出るのに、時間がかかった。
 朝早くの商店街は人も少なく、松竹座の前だけがざわついていた。席は前の方の端っこだった。一人には居心地がいいところだった。
 演目は二本立て。
 「黒蜥蜴 緑川夫人編」
 明智小五郎は久しぶりだ。子供の頃は、本でも読み、テレビでも映画でもよく見たものだ。懐かしい感じだし、舞台が古風で、新派らしい。令嬢の振り袖姿が豪華で印象的だった。
 「家族はつらいよ」
 山田洋次監督の映画でお馴染みらしいが、私は初めてだ。多分マイクは仕掛けてなくて、地声のみだったと思う。台詞が現代劇の早いテンポで動きがあると、聞き取りにくい場面もあった。花道や座席の通路などもたまに使って、面白い演出だった。結婚四十五年くらいの老夫婦の離婚騒動、救急車騒ぎ、うちでもありそうで、身に詰まされる話の展開。独身が長くやっと結婚する息子とか、もう若くない働き盛りの長男夫婦が、夫と妻で微妙な意見の食い違いを見せて、とかありそうなエピソード満載で、客席の笑いを誘っていた。ドタバタではないが、静かにしみじみ笑える芝居であった。水谷八重子(良重)、波乃久里子も元気そうで、懐かしかった。
 歌舞伎ではなかったので、お弁当を持って入らなかったが、長い幕間にお弁当を食べる人もいて、しまったと思った。お昼が遅くなることに気づいたのだ。
 2時に終わった。ロビーでエスカレーター沿いに日本画を眺めながら一階に降りると、「家族はつらいよ」の告知が二つ並んでいる。11月に、藤山直美松竹新喜劇も、やるようである。新派もよかったが、できれば、新喜劇が見たかったなとちょっと残念に思った。
 風があって、気持ちよかった。御堂筋に出て、道頓堀から心斎橋まで、久し振りに大丸で食事とお菓子でも買って帰ろうと、歩いた。大丸は、南のもと大丸の立て替え工事が終わったところで、オープンの準備中の時だった。営業している北館も、何か世話しない感じだし、レストラン街が、どうしてか半分以上、閉まっている。
 前に東京で、シフォンケーキを置いてない英国屋に当たり、がっかりしたことがある。ここの英国屋は、店頭のケーキのケースにシフォンケーキがちゃんとおいてある。軽食とあとで、リベンジのシフォンケーキと紅茶にしよう、ゆっくり時間をかけて楽しもうと英国屋に入りたかったが、並んでいて、時間を取りそうだった。おなかもすいていたので、洋食に代えた。ハンバーグランチを食べた。スープもハンバーグも美味しかった。
 寝屋川に着いて、七時過ぎのバスに乗る頃には、もう日が暮れていた。日の入りが早くなったと実感した。
 この日台風15号が、東海、関東地方で猛威を振るっていた。すさまじい風が吹き、被害は甚大であった。
 夜9時のニュースでそれを知った。

雨の日の続きやうやく松手入れ
秋澄むや大阪の空こともなく
重陽の新派の懸かる松竹座
空高し難波心斎橋ぶらり
大丸の建て替え終る律の風
爽やかな街に贅沢ランチして  十河智