ゴールデンウィーク

ゴールデンウィーク
       2019/05/07

その一

 娘の一家が、この連休は来ないと思っていたが、3泊だけ来るという。だんだん孫が大きくなって、いろいろと忙しいらしい。孫が来るとなると、つい多く買い物をし過ぎてしまう。そこへ賞味期限3日という鰹のたたきが柵で届いた。冷蔵庫は、パンパンである。都合で夜の出発で、こちらへ到着するのは夜中だと連絡してきた。
 夜中の走行は、渋滞を避ける手でもあるようだ。到着後にいうには、それほど混んでいなかったらしい。男の子二人も寝ていて静か、運転は案外楽だという。心配するのは、親ばかり。若いということがどんなものだったか思い出せもしない。

孫来るとぱんぱんになる冷蔵庫
三百キロ八十八夜の真夜走行
まだ着かぬ午前一時の冷茶かな
起こされてまた寝入りけり春の果


その二
 今回娘たちが大阪、いや、寝屋川に帰ってきたのは、「野球堂一球」という野球用具の専門店で小学校四年生の次男のグローブを買うのが目的のようだ。初め聞いたときは、静岡にもそんな店くらいあるだろうにと思ったのだが、娘がいうには、全国的に有名な品揃えの店で七店の内の一つだと、ネット情報である。
 入ったことはないが、店自体はよく知っている。そんな有名な店なのかと、改めて見直す。二階建で、四台ほど駐車できる。棚いっぱいに、スパイクシューズ、グローブ。真ん中にユニホーム、アンダーシャツ、バットは二階へどうぞとある。
 季節がいいのか、父親と子供、家族四人で、野球体型の子供たちが続々やって来る。目的のものが決まっているようで、脇目も振らず、その棚へ急ぐ。初めての家族は詳しそうな店員に説明してもらいながら品定め。うちの娘はスマホ片手に、メーカーのサイトで、年式と値段、大きさとか、用途の種類を確認しているようだ。時間がかかる。靴の試着用の椅子があって、座らせてもらって待っていた。
 見ていると、どこかのチームに所属らしい高校生や大学生、親子でキャッチボールらしい親のグローブを買う人、スポーツマンはあまりしゃべらない。静かな店であった。
 やっと決まったようで、使いやすいように調整がいるらしく、昼食のあと、もう一度取りに来ると言う。
 お昼は、寝屋川駅前「風月」のお好み焼きにした。婿にも娘にも懐かしい大阪があるようである。少し暑くなった日であるが、満席に近かった。ドリンクバー大人三人、子供一人、男の人二人はいらない、あれっと思う。孫の一人が十才過ぎて、ここでは大人料金だという。十才は、未満と以下をちゃんと読まないといけない、あやふやな境目であった。
 子供たちの変ブレンドのドリンクを味見させられる大人たち、笑いこける子供たち。楽しいお昼だ。
 それから一家で婿の実家へいとこたちに会いに行った。途中でグローブを受けとるらしい。
 夕飯はいつも通り夫婦二人。十時頃に寝に帰ってくる。
 
野球堂一球若葉風より男の子
野球する子達の躯体薄暑光
夏の雲親もグラブを買ひてゆく
パーキングよりまさき若葉の裏口へ
もう既にお好み焼き屋冷房中
ゴールデンウィーク孫ゐる卓の破顔かな
     

その三
 今日は、母親はお昼に、父親は夜に、それぞれの友人たちとの予定があるというので、子供たちをバトンタッチする計画を立てている。
 母親抜きでお昼は子供たちの希望通りピザの店に行った。最近大流行の店で、いっぱいだった。
 とても楽しく満足行く食事をしていたが、髪の毛が一本出てきた。加熱調理したものであるが、一応言っておかないとと呼鈴で係りを呼ぶ。店長が出てきて、作り直そうかと言うのだが、もう大部分食べ終わった皿で、これ以上あっても食べられないと断った。こういうときの対応は店によっては致命傷だ。まあ店長がすぐに来て謝って、そう向きにならずにすんだ。食べ終わって会計も終わり、聞こえるくらいに、大阪人らしく一家の会話。「髪の毛のお詫びに割引ありかと思ったけど、全然やったわ❗」
 用意していたと思うが、店長が追いかけてきて、次回に使ってくださいと、10%の割引券をくれた。聞こえたのかも、とまた一家の会話。大阪の話と思って聞いてくださいね。孫たちはきっと大阪と静岡で、話題も使い分けるようになるだろうな。
 そのあと、孫とお父さんのバッティングセンターに付き合った。行ったことがないので、面白かった。綺麗だった。球速によって扉が五つある。最速のところでも二人ともやっている。いろいろ試して一時間くらい。遊びがてらのグループも賑やかにやっている。コーチのような父親と息子の組が多いのだが。明るくて空が見える。待っていても気持ちがよかった。パチンコ屋と同じ経営なので、近寄ったことがなかった。孫といればいろいろ面白い。
 夜は婿の実家から早めに娘が子供を連れて帰ってきた。自分達が両方に送った鰹を二日連続で食べることになるが、仕方がない。賞味期限がその日で終わりなのだから。
 子供たち好みに半分を竜田揚げにしてみた。同封のチラシに書いてある通りに、酒で臭いを抜いた。子供も少しは食べてくれた。それに岸和田の穴子が珍しくあったので、買っておいたのを白焼きにして、並べた。添えたレタスと新玉ねぎが美味しかった。
 もう明日は帰ってしまう。

ステマティックバッティングセンター白きシャツ
球を打つ音軽快に燕の子
焼津港鰹の叩き良きうちに
白焼きにしてあなご二尾地元旬
新玉ねぎ添へてしゃきしゃき軽き音
     

その四
 孫たちの滞在最後の日、一週間後には私は恒例の一泊旅行の集合地の都合で、静岡一泊をいれたので、すぐに会えるのだが。孫と付き合い足りていない。
 「今日は電車に乗せる。」、と宣言し、親たちが帰り支度をしている時に、いつも句会へ行くよく知った道で高槻までつれていくことにした。孫二人と距離を取り、二人だけで行動するようにした。乗り場やホームを間違わないように、切符を買えたかどうか、そんなところだけ、確認する。冒険させたかった。
 枚方が読めること。高槻が読めること。バスの行く先のJR が読めること。それらを事前に兄の方に確認。母親が使っていた布製財布に千円をいれて持たせた。
 駅、切符の自販機に向かっている。大人の料金はわかったようだが、子供料金はどう買うのか難しかったようで、呼ばれた。小学校の間は子供料金でいいと思い、二人分の買い方を教えた。千円札を入れるのにも少しもたついていたが、買えたときは嬉しそうだった。弟はお兄ちゃんに渡そうとしたので、改札を通ってからと、教えて、通らせた。二人とも無事にピヨピヨと鳴って、通れた。弟はすぐに切符を兄に手渡す。そしてホームをどんどん先頭車両の位置に進む。対向の車両にも目を輝かせる。枚方駅では駅員にちゃんと切符を手元に残るように処理してもらう。先頭車両だったので、バス停までがいつもと違って遠かった。私が間違いそうになった。
 待たずにバスに乗れた。バス代は260円の半額ちゃんと用意して、一人づつ手に持った。淀川の河川敷もイベントなのか車も人もいっぱいのようだ。明るく晴れ渡る橋の上の眺めは最高である。
 高槻のJRの駅は久しぶりである。新しく、ここも再開発が終わっていた。昔のところもあったが、駅の通路やバスターミナルが変わっていた。
 ここからはおばあちゃんちまであるいて行けるというので、駅で孫たちと別れた。駅の連絡通路から、孫たちの歩く方向を追っていると、新樹の香りが風に乗って来るように感じた。まだ若い並木道がかなり続いていた。もう孫たちはどこにいるかわからなくなった。
 少し緊張があったかな、と思ったのは‼その後、喉が乾いて、休憩がてら、通路のスタンドで、コーヒーとアイスクリームを食べたときである。子供たちに食べさせてやればよかった。そう後悔していた。

五月晴祖父母の家がもう一つ
自販機の漢字カタカナ青葉風
子供二人通過ピヨピヨ夏の駅
夏の日のホーム先頭車両へと
青鷺や淀川渡るバスに乗る
孫たちを見送る不安新樹かな
高槻の駅も新しアイスクリーム

      十河智