坪内稔典さんのお話を聞く

坪内稔典さんのお話を聞く
         2019/04/28

 昨日は、関西現代俳句協会の総会と講演会があり、講師が坪内稔典さんだった。お話が面白いと聞いたことがあって、講演会だけに、出ることにした。三時からなので、11時に出て、充分に間に合う筈であった。
 ゴールデンウィークの初日、駅のプランターは、雛菊やマーガレット、チューリップと花盛り。人も多い。スーツケースが当たりそうになる。
 前日、ニュースで、寝屋川市での殺人事件とその犯人の飛び込み鉄道自殺を伝えていた。その駅を通過してもなんの変わりもなく、これが都会なのだと思う。一瞬止まっても、直ぐに動き出す。
 途中、天満橋ジュンク堂に寄った。友達が薬草園の見学に予習用の手引き書を探してといってきていたが、うちにあると思っていた本が、どこを探してもない。処分してしまったのか思い出すこともできない。辛うじて見つけたものは、分厚く、半世紀以上も前のもの、今でも役に立つが、こんなものにも流行がある。写真の写し方が古い。何より愛着があって手放せない。もっと手軽な今風のものを探してあげようと思ったのだ。
 本屋に寄ると楽しくて、時間を忘れる。目的のものを手にしてから、自分用にも写真の大きい雑草の本と、毒草の本を衝動買いしてしまう。物忘れ回復に、草抜きの後に、確認するのだ。そしてまたついでに、「はてなブログ」の解説本なんかないかとそのジャンルの書棚へ行くと、案外簡単に見つかった。ドメインとか、CSSとか、よくわからない言葉が多すぎる。これも買ってしまう。レジを済ませると2時を少し回っていた。
 タクシーでホテルへ行った。30分でサンドイッチと紅茶の昼食をして、講演会の会場へ行くと、前の総会がまだ終わっていなかった。食後がゆっくりできたので助かった。
 講演会が始まった。司会の方は、FB のお友だち、帰る前に是非お声掛けさせていただこうと思う。実際の交流が混ざることが、インターネット上のお付き合いにも必要と最近感じているのだ。
 坪内稔典さんとは一度、ある俳句の懇親会場で同じ空間にいたことがあるが、遠いところにおられた。お話をじかに聞くことができなかった。今回とても楽しみにしてきた。
 期待通り、面白く、しかも、常日ごろ私の思っている俳句実践論と共感できるところばかりで驚きがあった。淡々と、これからも俳句を続けて行こうと、思いを新たにできた。
 「俳句の未来」と題されてはいたが、過去それぞれの時代に新しいとされた俳人たちの紹介であり、稔典さん自身の実践の回顧談であった。それが、未来ある俳句への方法論に繋がっていた。
 俳句は日常語で作られ、その時代を反映していること、と言われた。文語に限定することは作り手に教養を要求する。これは範囲を狭めていく要因になる。俳句に新しい言葉が豊富にあるのは今つかわれている言葉の中にしかない。
 句会、作り手にも鍛練だが、何より力のある読み手を増やす。今よくある指導者の選や点つけのみの句会ではなく、議論する句会、酒をのみ最後はごちゃごちゃになるような句会、というようなことを言われる。
 新しいとはどう言うことか、誰も注目しないということがそれかもしれないとも言われた。選がないことを嘆く必要はないと。新しいことへの反応は徐々に起こるものだと。
 俳句は短いゆえに膨らむ、その例を自句、「三月の甘納豆のうふふふふ」で面白く語ってくださった。目の前にあった甘納豆。実は好きではなかった。俳句を発表すると話題になった。甘納豆の贈り物が来るようになった。おしまいにはメーカーが近づいてきた。まあ面白く脚色していらっしゃるだろうが、俳句は一人歩きし出すということだろう。
 メモもなく、うろ覚えの部分もあるだろう。いづれ会報に、文字に起こされるのが待ち遠しい。
 楽しい講演のあと、お忙しそうなFBF に、十河ですとだけお声をかけて、会場を後にした。
 天満橋駅で、コーヒーでもと思ったが、どこも行列だったので、直ぐに電車に乗った。坪内稔典さんの講演のことを思い出していた。
 

ゴールデンウィーク花いつぱい人いつぱい
春麗昨日事件のありし駅
駒返る草跳ね回るこどもたち
ハナミズキ大きなスーツケース引き
連結車輌運転室無駄春の雲
あつ遅刻書店に過ごす春の午後
間に合わすサンドイッチとアイスティー
目借時講演都合よき遅れ
のどけしや親しみて呼ぶ稔典さん
桜蕊降るやこつこつ言葉来て
ご挨拶して帰りたし暮の春
ゴールデンウィークマクドの長き行列は
風光る各駅にドア開く度
春の雲稔典さんの語り口   十河智