百足があがる家

百足があがる家

        2024/09/10

        十河 智


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 梅雨になると、必ず百足が床上に上がってくる。今日今年初めて捕まえて殺虫剤をふりかけ回して、ポリ袋に入れたまま、死んだのを確認して、ゴミ箱に捨てた。
 家は、住宅街だが端っこで、庭は矩地、あまり造作もせぬ荒れ庭で、石も埋まったまま、その隙間にたぶん百足が代を継いで、生きているのだと思う。住み始めた頃は咬まれたり刺されたり、よく腫れて痛くて、アンモニアやかゆみ止めの軟膏が手元からはなせなかった。今は用心が身についたというか、刺される前に退治できるようになった。
 都会に住んでいるつもりなのだが、ここは、アシナガバチスズメバチ、蟻、百足、刺す虫のオンパレードである。
 端っこで、少し広く、近所の眼も気にしないでよいからと、この土地は主人の親が決めてくれたのだが、虫に悩まされ、空き巣に入られたりもした、良し悪しであった。そこで子が育ち、老後を迎えている。五十年経った。百足は何代目なんだろうか、などと考えたりもする。暇な年寄りである。

百足掴むポリを被せて指先に
子も這ひぬ虫上がり来る夏座敷
端つこの家良し悪しちちろ鳴く
望の夜や百足継ぎ来し世もあらむ
目の前の虫さされにはアンモニア