虫の声

 

虫の声

      2023/09/20

      十河 智

 

 最近は足元不如意につき、特に石段などは、側面の石垣などに手を付きながら、ゆっくりと登ります。

 うちは玄関まで三段ほどの石段で、そんな慣れた少ない階段でも、用心して登るようにしています。

 外から帰り、いつものように、登っていこうと手を付きかけるとき、何か動いたのです。孵ったばかりらしい子蟷螂。裏の植木の小枝に卵が纏わりついていましたが、孵ったみたいです。ここに住み、もう50年、鈴虫も、蟋蟀も、手入れしない庭の草むらで、世代を継いでいるようなのです。今年はまだ鳴きませんが、毎年、虫の声を楽しんでいます。待ち遠しいこの頃です。

 

 

子蟷螂ちようど手を突く石の上

young mantis on the rock, 

on which I just putting the fingers

 

繊細なひ弱なみどり子蟷螂

a young mantis,

in the colour of the delicate and faint green

 

見(まみ)えしは既に孤独な子蟷螂

I met a young mantis,

T"was already solitude

 

虫の音の未だ届かず九月半ば

mid-September,

yet I do not enjoy the songs of insects

 

蟋蟀や半畳ほどの土間に鳴く

a cricket,

it chirps on a small eatth floor