野名紅里句集「トルコブルー」邑書林
を読みました。
2023/07/24
十河 智
野名紅里句集「トルコブルー」邑書林
を読みました。
この句集の作者は直接の交流は全くない方だが、発行元の邑書林の配慮で、贈って頂けたのだろうと、初めて接する俳人に、どきどきわくわくしつつページを開いた。
装釘が素敵だ。私も大好きな色、本の題名にもなっている「トルコブルー」、俳句の並びを連想させる縦の太線。
私の個人的回想の中にある書店に送られてくる時に付く注文カードという付箋。
祖母の家は地域の小さい本屋で、店番をよくしていた。本を売ったら、必ずこの付箋を抜いて次の注文に使わなければいけないのだが、抜き忘れて叱られることが多かった。よく見ると今はバーコードが幅を利かせているようだ。地方・小出版流通センター取扱品とある。高校、大学時代はよく手伝ったので、そういう場所にも本を取りに行ったなあと、自分の家の商売で扱う米とか結婚後の主人の家の材木とかよりも、思い出が多い。
本題に戻ろう。
句は、装釘の印象と同じで、さらっと気持ち良い手触り感で、作者の作る場面のすぐ間近で立っている気分で読むことができる。
解体
空蝉のこはれやすきをこはさずに
ストリートオルガン秋の暮れてゆく
うみにふるゆき帰りたい帰りたい
語彙
カフェに客一人店員二人の夏
ともだちも私も大人しやぼんだま
指先
君が寝て君が残した缶ビール
怒ってゐますサイダーを頼みます
かざぐるままはるどこからこはれるか