加藤喜代子句集「暦日」を読みました。
2023/02/12
十河 智
加藤喜代子さん、「ゆう」で行う句会などで同席したことがある位のお付き合いである方だった。
句集「暦日」を出されたことを知って、久しぶりにふらんす堂へ電話で注文した。電話で注文できるのはありがたい。ネットでの注文は、どうも最終確認に不安があって、年寄りは苦手である。
この本を手にして、お孫さんの藤本夕衣さんの付記にて知ったが、句集完成、「あとがき」の直しを入れた二週間後に亡くなられたそうだ。
確かな年齢を略歴で見ると、私の母と同世代、裕明さんを偲ぶ会が、一周忌に企画されたとき、お会いしたと記憶しているのだが、機敏でシャキシャキした感じが、忘れられない。母は八十三歳で、もう十年以上前に亡くなっている。その年ごろに、お会いしていたのだ。しっかり握ってくださった手の感触も思い出す。
加藤喜代子句集「暦日」より好きな句を挙げさせていただく。
冬
裕明先生一周忌
ひと偲ぶ旅に冬田やうち晴れて
ひととせの冬水無瀬野の雲強し
坐られし椅子今もある落葉かな
冬帽子森ゆく人となりて行く
冬帽子上野にひとり遊びけり
ちりめんの風呂敷ほどく寒日和
如月や幼きころのいくさ歌
春
絵踏して島へもどりの艪音かな
ゆび老いぬはなびらひとつ拾ふとき
夏
傘ふたつ寄せあふ今日の墓参かな
夏草に触れて渋民駅に立つ
秋
秋潮にながくのばして手を洗ふ
夕衣博士論文出版
露けしやその名にふかく頷きて
千住刑場跡
ここに聞く松陰の死や赤のまま
子孫とも呼ぶべき赤子水澄めリ