会食

会食

        2021/12/17

        十河 智

 

 昨日、この間、ピアノコンサートを開いた有馬みどりさんとお昼をご一緒した。

 主人が、コンサートの案内が来ると、その後に慰労の意味でいつも段取りして、機会を作る。早くに亡くなったお母さんも思い出すし、代われないけど、少しの後ろ盾、応援のつもりもあるらしい。

 会った場所は、新神戸駅近くのANAのホテル、予約のあと、コロナの影響で、お料理が限定されるがいいかと確認の電話が向こうからあった。バイキングはやめていますという。

 少し早めに着いた。時間通りにみどりさんも来てくれた。選べというので、暖かそうな日が当たる席に着く。

 プレートとかカレー、サービスの少ない料理がメニューに並んでいた。それぞれに好きなものを注文した。

 私も、結婚以来、彼女とは家族ぐるみのお付き合いで、何度か家に伺った。初めてみどりさんにあったのは、彼女の自宅で、お母さんのあさりご飯を、ごちそうになったと思う。まだ高校卒業くらい。高校は縁あった伝手で、単身ロシアの音楽学校へ留学、言葉に苦労した話など聞いたかと記憶している。

 この時、ピアニストとしての経歴とか育て方というものの特別さを実感したのも覚えている。お母さんは、自分は、市中のピアノ教師で終わるが、娘には期待があるようで、そのための努力は惜しまないというふうであった。

 だが残念ながら、彼女は立派にリサイタルまで開くようになったみどりさんの晴れ姿は見ずにこの世を去った。がんであった。話になると思い出すのは、お葬式に高松から駆けつけたみどりさんのお祖母様の意気消沈とした姿である。今の私くらいのお年であった。早く亡くなるというのは、これほど親を悲しませるのだと、身に沁みて感じた。

 もう16年と、この会食の際に、写真を見せてくれて、みどりさんは語っていた。普段立てかけて見ているフレームのまま。お母さんの可愛い笑顔がそこにあった。

 懐かしい話をして一時間あまりを楽しく過ごした。お菓子の箱と、イベリコ豚の肝のパテの瓶詰めを入れた紙袋を、お歳暮といって渡してくれた。神戸には美味しいお菓子屋さんが多く、何をもらっても嬉しい。

 彼女は西宮なので帰りを送ろうかと、主人が言うと、三宮で、夜また人に会うという。

 そこで別れて、雨が降りそうなので、高速に乗り、急いで帰った。

 頂いたマロングラッセは、とても上品な味で、今日はとても寒い日だが、美味しくお茶をしている。レバパテも、今日のお昼の野菜炒めに混ぜ込んでいただいた。

 

コロナ禍のANAのホテルの冬日

カーディガン脱ぐ指先やピアニスト

冬日向タイのグリーンカレー映え

辛さ良し悴みの身がぽかぽかと 

亡き友の若き笑顔や山眠る

冬の日の思い出ありき三宮

「送らうか」「また人と会ふ」歳暮出し

神戸より時雨心地に帰りけり

マロングラッセ紅茶も選び凍つる日に