漫ろ歩きの住宅街
2020/09/30
十河 智
通信句会の投句をポストに入れにいく途中、住宅街の中を回り道、ぶらぶらしてみた。最近脚力に自信がなく久し振りの長い散歩になった。一人だとペースが決められるので案外楽に歩けた。
私がここに来たとき、旧村との境にあった4軒長屋が、新しい一戸建て2戸に変わっていて、もう人が入っていた。
住宅街の中も、コロナが少し収まって、工事が盛んに行われていた。多分、中途で停止していたものなんだろう。
ポストもあるバス停で待合の椅子に座り、一休み。バスに乗る人たちが振り返って不思議そうだったが気にしない。サイレンを鳴らしてパトカーが疾走して抜けていく。滅多にないことで、驚いた。
また住宅街の端っこの野鳥が観察できる池にまわった。この池は、あの池の水を全部抜くテレビ番組で、きれいにしてもらって、その後整備されたものだ。小さい池だが、気持ちよく風が吹いていた。睡蓮の葉が揺蕩い、しらさぎの羽毛が一つふわりと目立っていた。
池の隣は運動場、端っこには雑然と秋の草花が咲いていた。萩、マーガレット、サルビア、キバナコスモス、そしてなぜか、彼岸花。
石のテーブルとベンチが、工事の人たちのお弁当の場所になっていた。私ももう一度休憩した。本当にいい風の吹く日だ。
帰り道でちょうどわが町を一周する。住宅街の自治会役員の札は、新しく着た人たちの家にぶら下がっていた。途中であった人は、地域のお米屋さんで、多分私よりも10歳は若い人だが、もう老人になっていた。店は閉めた様だ。
1時間半、暑すぎず、寒すぎず、ちょうどいい散歩コースだった。
秋の陽を選びて漫ろ歩きなり
朽ち長屋消え去りてをり菊の庭
バス停のベンチに長居秋蝶来
公園のベンチ弁当開け素秋
場違ひに植木の間曼珠沙華
一毫の白鷺の毛や秋の池
植えしやら飛んで来しやら秋の花 十河 智