夢街道ーオカリナ演奏

夢街道ーオカリナ演奏
         2019/12/02
         十河智

 麦笛句会でご一緒する米家泊さんが、俳句とは別の、音楽に合わせて詩を朗詠するというライブ活動をなさっているという。演奏家に招かれたりして、ライブハウスでの演奏や高齢者施設への慰問など、かなりの頻度で行かれるようだ。句会に欠席なさるときは大抵、その活動だとは伺っていた。
 お話を聞くと、漢詩を趣味としていたが、音楽に合わせて漢詩とは限らず、いろいろな詩を朗詠をするようになったという。神戸、大阪、京都で主にやっているというので、京都のときは教えてくださいとお願いしていた。
 ライブ開催のリーフレットに手書きの漢詩の注釈書をいただき、漢詩を餌に主人も誘い、下鴨神社近くのカフェでのライブに出掛けた。
 「夢街道」というユニット名で一年前に結成されたオカリナとギター、それに彼の朗詠を重ねたパフォーマンスを披露しているという。今回は別の二胡二人のユニットを招待してのコンサートである。懐かしい歌からあまり聞かない中国の曲、二胡とオカリナの音色にうっとり、ギターが親近感を添えてくれる。
 米家さんはここでは、哲郎さんである。メンバー紹介もなさったが、その声はいつも聞く声。朗詠のときの声に驚く。張りのあるとても伸びやかな楽器のような揺らぎのある声であった。漢詩の読みは日本語と中国語。このごろ中国の歴史ドラマに夢中の私は、いただいたメモを見ながら、わかる発音の漢字を見つけて喜んだりもした。寒山寺以外は、知らないが、曲に合わせて、選んだという珍しい中国西北部の葡萄酒の詩が興味深かった。由来はその地方の民謡に合わせて唱うものだったといい、音楽によく合っていた。
 古いシャンソンの歌詞の「ミラボー橋」、私たちには懐かしい藤村の「初恋」、こういう雰囲気で聞くと、穏やかな中にも、高揚感が生まれる、やはり恋の詩である。
 オカリナの方は、音域の違う三個のオカリナを使い分け、熱演された。貸しスタジオでの練習もいつもなかなかやめてくれないというエピソードが紹介されたり、「夢街道」という軽快な曲は、オカリナとの出会いの曲で、グループ名の由来となっていることも語られた。
 選曲は、演奏場所によって、傾向を変えたと今まで活動を表すように、いろいろなジャンルのものを、聞かせてくれた。テレビ番組の主題曲、歌謡曲、クラシック、童謡。二時間を楽しんだ。
 休息の間はカフェのティータイム。観客の「ここのコーヒーはおいしいわ。自家焙煎だって。」という声に、紅茶の私は、夫のコーヒーを一口味見したりした。少し詰め込み気味の30人ほどの観客。和気藹々で、暖かい雰囲気である。壁には、草花の水彩画が、飾られているギャラリーにもなっている。名のある作家さんなのであろう、一つ一つに小さく値がつけられている。帰る前にゆっくり鑑賞させて貰った。
 会場は葵橋から東に少し下鴨本通沿いなのだが、狭い路地を経た奥まった建物で、行き過ぎてしまって、探した。電話を掛けて確認して戻ったのだが、前に一度来たことのある有名なチョコレート屋さんの向かいだった。その日の自分用のお土産は、ここの生チョコであった。
 ついでにと思って八瀬に行こうとしたが、一本道は渋滞で、途中で諦めた。山の色づいた様子を見られただけでもよかった。帰りは日暮れ時になり、京都の道は時間を喰った。三日月が綺麗だった。
 
二胡の奏漢詩朗詠紅葉狩り
隠れ家のやうにライブの冬館
冬陽射す吟じて声の朗朗と
二胡に乗せ漢詩を詠ず蔦紅葉
高中低音域三つのオカリナ冬日
二胡二人「吐魯番の葡萄熟す」とふ
生チョコの季節限定十二月
高速道の切り取る空や冬三日月