御神木、オガタマノキを初めて見る  2019/3/22

御神木、オガタマノキを初めて見る  2019/03/22

第三日曜日は麦笛句会である。
 三月の句会は、半年ぶりくらいに、骨折や介護で来られなかった人が参加、また選者のお一人、四ッ谷龍さんも、
旅の途中らしき出で立ちで立ち寄られ、大人数、部屋いっぱいになった。
 あまり芳しくない成績で、自選五句にも困るくらいの結果だったが、句会はいつものように進行して終わった。
 途中、四ッ谷龍さんの口から「おがたま」という聞きなれない言葉が発せられ、「勾玉(まがたま)」とは違う、木の名前のようだけど、と次を聞き逃すまいと話についていっていた。
オガタマノキ」は神社によく御神木として植えられるものらしく、四ッ谷さんは、オガタマ追っかけらしい。日本地図にオガタマノキのある神社と、今までいったところを印をつけて持っていらっしゃった。いろんな人がいるんだと思うとともに、オガタマノキって、どんな木で、今頃咲くという、龍さんをも虜にする花はどんなものだろうかと興味を持った。
 句会は、京都、大阪の境目、京都府大山崎町で開かれるが、隣は大阪府島本町である。島本町にある若山台という住宅街の住人が何人かいる句会で、その人たちの情報で、島本町の若山神社という神社の境内にもそのオガタマノキがあって、御神木であるという。
 急遽、見に行きたいという五、六人が集まり、四ッ谷さんの時間の都合もよいので、神社へ行くことになった。一台では車に乗り切らない。私たち、遠来組は、大山崎の駅からタクシーに乗ることになり、地元の人に呼んで貰った。小さな駅でタクシー乗り場はないのだ。
 すぐにタクシーがきた。乗り込んで行き先を言っているとき、運転手が少し車をバックさせた。と、後ろからクラクション。そして、軽くドスンコトっと衝撃があった。運転手が降りて行く。後ろの人は怒りぎみ。しかしすぐに帰ってきて、どちらも傷はなかった、と言って出発してくれた。確かに少し音がしただけで、揺さぶられはしていない。大事にならず、よかったと思った。もう夕方、ここで手間取れば、せっかくのオガタマノキを見逃す、などと句友たちと話していたのだ。
 だんだん細くなる山道を五分ほど上がると神社がある。少し開けた場所に、社と案内板と一本のすごく背の高くて太い木があった。この木に札が括られていて、「御神木、おがたま」と書いてあった。
 初めて見るものには予想外の姿だった。まことに御神木にふさわしい。気高く、暗く厳かな森に姿勢正しく、立っている。「もっと背の低い木だと思っていた。」私も、句会ではおがたまの花が今の時期をはずしては見られないということだったので、花がもっと見やすい位置にあることを想定していた。実際は、おがたまの花は、遥か高く、葉陰にちらっと白く咲いている。少しがっかりなのである。オペラグラスがほしい。それほどの高さであった。
 不便なところで、帰るに帰れないからと、タクシーに待って貰っていた。神社の縁起も展望する町もそこそこに、ただオガタマノキだけを目に焼き付けて、すぐに山を降りた。地元の人たちと龍さんは残って散策する様であった。
 運転手に、駅をどこにしますか、と聞かれた。どこの駅でもよくにた距離で降りていけるという。タクシーの停めやすい水無瀬駅にして貰った。出発の時のドスンはもうごめんだった。 

山遊び乗るタクシーのドスンコトツ
山笑ふ何事もなき軽き事故
若山台若山神社春時雨
黄心樹木蓮(おがたまもくれん)高く大木こんなにも
小賀玉の花を確認待つタクシー
残る人黄心樹の咲く境内に
春の夕麓のどこへ降りますか?  
      十河智