句帖を拾ふ(2020/03)

句帖を拾ふ(2020/03)

        2020/04/01

        十河 智

 

1

席題2020年03月第一週

「東風」

梅東風や青谷地区の野良に立ち

池の辺の寓居に東風のやはらかき

故郷に父母をらず鰆東風

 

2

春場所の無観客とふ空虚かな

vacancy of no spectectors ;

the spring Grand Sumo Tournament

 

3

コロナ禍に断念春の甲子園

興行はコロナ鎮静後の四月

 

4

桜前線コロナ感染日本地図

 

5

春の海
spring sea

春の海越えてアメリカCOVID19
crossing the spring sea ;
a COVID19 epidemic in USA

 

6

春の沖に揺蕩ふ豪華クルーズ船
floating far off the spring shore ;
a luxury cruise liner

 

春の雪
spring snow

春の雪少し遠出の道の駅
going on a bit of outing to a roadside service area ;
spring snow

 

8

花だより標本木の一輪の
news about cherry blossoms ;
one blossom on the sample tree in Tokyo

 

春の山
spring mountain

春の比叡昨日は琵琶湖今日は京
spring mountain, the Hiei ;
yesterday at Lake Biwa and today in Kyoto City

 

10

風に零れ梅は蕾のままにあり
Ume buds on the earth not coming out to blossoms ;
the wind is blowing

 

11

コロナ中春の歳時記発信す

Coronavirus throughout the world ;

Saijiki spring is published to the world 

 

Please read Saijiki Spring when you are confined to your room.

 You will become more familiar with HAIKU & KIGO

 

12

[ 連休は「席題で一句」合評句会 ]

席題=桜(さくら)


ウイルスのひそむ街角初桜 ☆1

里桜今日か明日かと立ち止まり ☆3

夜桜や光集めるスターの木

 

13

春の海

spring sea  

 

春の海越えてアメリカCOVID19

crossing the spring sea ;

a COVID19 epidemic in USA

 

14

春の沖に揺蕩ふ豪華クルーズ船

floating far off the spring shore ;

a luxury cruise line

 

15

抜けるやうな青空雲麗らかに

a clear blue sky ;

a few clouds cheerfully

 

16

春驟雨ほんのいっとき憤(むずか)る子
a sudden spring shower for only a short time ;
and a fretful child

 

17

春昼
spring afternoon

 

春の昼自粛自粛を潜り抜け
ignoring the governmental request not to go out in unurgency and unnecessity ;
spring afternoon

 

18

大広野その向かうなる花蘇芳


cercis chinensis ;
far beyond the open field

 

19

東京の倍倍花見どころかと  

far from cherry-blossom viewing ;

day by day the number of the new Coronavirus infected persons in Tokyo doubles 

さすがに今日の40人には驚きました。心配です。

 

20

席題2020年03月第四週(03/28~0/29)
「蝌蚪」
蝌蚪生まる田圃の中の小学校
しゃがみ込む子の飽きるまで蝌蚪の紐
蛙の子町の空には鳥が飛ぶ

 

21

京大阪奈良と入り組み春朧
Kyoto, Osaka, Nara ;
rugged doundaries in spring haze

 

この三県と大阪と橋一つで隔たる兵庫、首都圏に匹敵するそうです。今日も人が梅田に集まってきているそうです。

近つ飛鳥博物館の梅林へ

近つ飛鳥博物館の梅林へ

          2020/03/04

          十河 智

 

 もう最後かもしれない梅を近つ飛鳥博物館の梅林へ見にでかけた。
博物館は大阪府立施設で、コロナウイルス関連で休館中。しかし、周辺の梅林は順路を書いた地図がコンクリートの壁の閉館のお知らせの掲示の横に備えてあり、心遣いを感じた。
 前日の短時間であったがかなりの土砂降りの雨で、順路は湿い泥道で、板が置いてあったりした。
 周辺は谷になっていて、底に池があり、細い流れがその日は結構な水量で音を立てて流れていた。
 梅はもう終わりかけていたが、ときに満開の一本がある。雄しべの張りが笑顔に見えた。それが集団で迎えてくれた。ある一本は源平咲きのもので、疎らならばこそ、じっくりと見ることができた。

コロナ休館施設周辺梅見地図
梅園に咲き残る木を足れるとし
梅一木(いちぼく)万の笑みもて饗され
音立てて谷川のあり枝垂れ梅
春の泥ここまで先は行き止まり

潦板を渡して紅梅へ

紅白梅一本(ひともと)なるをまじまじと  

コロナウイルスとの戦い中

コロナウイルスとの戦い中

        2020/03/01

        十河 智

 コロナウイルス感染拡大の中、まだ安倍総理の決断が発表される一日前のことである。学校薬剤師として出務しているところから、問い合わせがあった。
 卒業式など大事な時期に、教室ごとにもアルコール消毒ができるようにしたいが、スプレーなどの容器も、消毒用アルコールも市中になくて足りない。一件、手指消毒用としている一斗缶入のアルコールがあると言ってくれた店があり、値段が安い。これを使っていいのかどうか、相談したいと言う。
 どこかから返品があって、それだけしか在庫がないという。商品名やラベルでは成分はわからないと店では言っているらしい。結局、店の人も、学校の先生も、私も、メーカーの医療従事者向けのサイトに行き着いて、同じ画面で成分を確認する形になった。
 外皮用殺菌消毒剤とある。
 成分は、100ml中
メタ変性アルコール 52g
イソプロパノール 18g
タール色素青色1号 適量。
 青色色素は変性アルコールの印だが、イソプロパノールのみの混合でも製品によっては色付けられている。メタ変性アルコールのメタというのがよくわからない。アルコールランプの燃料用や、工業製品の洗浄用、医療器具のみの消毒殺菌用とその際の手指消毒用として、メタノール変性アルコールがある。揮発し切ってしまうことが前提の用途である。
 メタの意味するところをメーカーに確認してから購入を決めてください、メタノールが入っているのであれば、密閉空間で持続的に使用する今回の用途にはお勧めできませんとお返事した。
 後で気になり他のメーカーで、同様のものを探してみた。そこにはメタノール変性アルコールと記載されていた。しかもそのメーカーは消毒用としては、これは旧製品、新たにメタノールはすべてイソプロパノールに置き換えたものを出している。人に使う消毒用からメタノールを除くことにこのメーカーはしたようだった。
 そんなこんなで一日過ごしていると、夕方、突然の安倍総理の決断、それを受けて、我が府、我が市も、一斉に休校が決まった。多分学校の今の備蓄分で当面は大丈夫になったことだろうと思う。
 卒業式ができないことは残念ではあるが、全国で、先生方がいろいろな工夫をしている姿がニュースになっていた。在宅授業までは体制が整っていないかもしれないが、娘などを見ていると、親の連絡網はラインなどを利用しているようなので、メッセージを伝える手段はある。子どもたちに、ちょっと変わった卒業の思い出を残してやってほしいものだ。この休校が、新型コロナウイルスという人類の敵との戦いであり、自分たちのためだったと、子どもたちもいづれ理解するだろう。
 私は、別の理由で大学の卒業式ができなかった。今は同窓会の度に、自分たちだけのテレホンカードに収めた卒業写真が思い出に持ち出される。半世紀経っているにも関わらずである。

 アルコールがなくても、石鹸での手洗いでいいですし、水道水を電解する装置で、薄い塩水を電解してできる弱酸性次亜塩素酸水も消毒殺菌に使えます。
 

三月やまた拡大の感染地
春休み前の休校いつまでか
御し難しコビッド19ひなまつり
三月のCoCo壱番屋四人席
春の靄危ふきカフエの漫画本

句帖を拾ふ(2020/02)

句帖を拾ふ(2020/02)

        2020/03/01

        十河 智

1

冬の泉
winter fountain

水汲みの悲しき少女冬の泉
a miserable girl drawing water with a bucket ;
winter fountain
冬の泉漫ろ歩けば陽当たりて
strolling and to a sunny place ;
winter fountain

 

2

冬の川
winter river

めめぬめと何かが潜む冬の川
something is lurking in the winter river ;
slightly slimier with some viscosity
冬の川水面をライトアップして
winter river ;
illuminating the surface of water

 

3

冬の浜
winter shore
冬の浜駄駄広くただ波を聞き
winter shore ;
overly spacious, only in the sound of the waves
船でしか行けぬ入江や冬の浜
no choice but by boat to the inlet ;
winter shore

 

4

鍵一つきらり寒夜のアスファルト  
a key flashed ;
an asphalt pavement on a cold night

 

夫が「キーホルダーに、家の鍵がついてない。」と、また言い出した。前にもあって、そのときはスーパーの駐車場の駐車位置でドアの辺りの位置で見つけた。
 今回も、捜し物名人が立ち上がる。
 車を最後に出したところが一番怪しい。今日もその駐車場から遡ることにした。すぐに引き返して、別の場所に車を止めて、前に止めた駐車スペースをなぞっていると、キラッと光った。
 「落ちている。良かった。」よりも先に、「やった。」と思った。
 「探しものは私だ、やっぱりね。」と。

 

5

黒猫を呼べば撫でさせ春隣

the called black cat let me stroke on the back ;
spring will come soon

 

6

冬の海
winter sea

冬の海真つ暗闇の果てもなし
complete darkness endlessly ;
winter sea

冬の海大海原のその向かう
a desire to the spaces beyond the great ocean ;
winter sea

 

7
初雪
first snow

初雪や品川歩き知る前に
first snow ;
before walking aroud to know Shinagawa
初雪や坂多き街東京は
first snow ;
ascending after descending all the way in Tokyo

 

8


snow

賀茂川に雪滲み入りて出町かな
snow sinking deep into Kamo River ;
Demachi, Kyoto
雪踏みつあの紛争の時計台
stepping on snow ;
the clock tower of that campus dispute

 

9

風花
fluttering snowflake

風花や堀川通り広き道
the broad Horikawa St. ;
fluttering snowflakes
佐渡へ渡る 風花闇に浮き沈み
snowflakes fluttering up and down in the darkness ;
to Sado Island

 

10
霜柱
ice needle

霜柱きらきらけふの芝生かな
ice needles ;
the grass being sparkly today

霜柱踏むザクザクとカタカナで
crunching on a path
of ice needles ;
stiffness

 

11

初氷
first ice

登校の途中バケツの初氷
an exciting discovery of first ice ;
a bucket on the way to school
踏む小突く必ず割りぬ初氷
stepping on, poking into , and cracking ;
always when coming across the first ice

 

12

氷柱
icicle

京に住む初めて氷柱見し時は
Kyoto was the place of residence ;
the first encounter with icicles
氷柱より落ちる雫や朝日射す
a drop from an icicle ;
the rising sun

 

13

着ぶくれ
heavy layers of clothing

着膨れと言へば最晩年の母
heavy layers of clothing ;
my mother's figure in the latest days
着膨れてホームレスらし紙袋
heavy layers of clothing ;
the homelesslike paper bag

 

14

白梅や初雪にして風花す

white Japanese ume blossoms ;

snowflakes fluttering as the first snow

 

季語の重なり最高ですが、後でもしないと今年のこの寒の戻りは表せなかったです。

 

15

毛皮
fur

毛皮売る若者ホストの如くなり
a young salesman of fur items ;
behaving as if a mail comanion at a club
合はせ持つ高貴と野蛮毛皮かな
fur ;
both noble and barbaric aspect

 

16

毛布
blancket

娘の家に持ち込む毛布買ひにけり
going to my daughter's home ;
buying a blancket to bring for my use
沖縄の思い出毛布持ち出す子
my memory of Okinawa ;
the blancket carried out by my boy

 

17

セーター
sweater

大きめの手編みセーターやつと着せ
a bit big hand-knit sweater ;
a consent with a reluctance to put it on
セーターの採寸母の息懸かる
having my measurements taken for a sweater ;
mother's breathing

 

18

コート
coat

吊り下げたままのコートや捨て切れず
a coat in longtime hanging ;
undiscardable
愛用のコート一着これをまた
the coat I regularly use ;
being out wearing in this again

 

19

席題2020年02月第三週(02/15~02/16)

「蕗の薹」

ほろ苦さ案外と好き蕗の薹

蕗の薹市街化調整区域なり

蕗の薹どんな大人になるだらう

 

20

冬帽子
winter hat

冬帽子それぞれ似合ふ顔思ふ
winter hats on the shelf ;
the face looking nice in each of those comes to mind
編みたくて使ふことなく冬帽子
a desire to knit a winter hat ;
not a chance to put it on

 

21

ショール
shawl

振袖に付きしショールや親も娘も
a shawl with a long-sleeved kimono ;
both of mother's and mine
すつぽりと孤独に浸るショールかな
fitting a shawl on my head ;
feeling lonely

 

22

手袋
glove, mitten

手袋の箪笥に深く何足も
a number of pairs of gloves ;
profoundly in the chest of drawers
馴染みたる革手袋やドライブへ
for a drive ;
a pair of the best fitting skin gloves

 

23

毛糸編む
knitting

デイケアで母の仕事に毛糸編む
the task of my mother at the day-nursing care home ;
knitting
毛糸編む最初は母の余り糸
my first knitting ;
the threads of wool left my mother

 

24

SL旅春爛漫を歌ひつつ 智

 

25

梅を見に行かなくてはと言ふ日毎

every day ;
saying " I shall go to an ume−blossom viewing. "

まだ行けていない。家にも白梅は満開なのだが、物足りない気がする。

 

26

都鄙朧梅のほのかに匂ふ里  十河智

the faint scent of ume blossoms wafting through ;

the hazy village in the suburbs  SOGO Tomoko

 

京都の南の郊外、寝屋川からも近い城陽市の青谷梅林にやはり出かけました。人出を避けて、夕方に。コロナウイルスの影響で、催し物などは中止と思いましたが、ちらほら人は梅を見に来ていました。

 

27

 

 

席題2020年02月第五週(02/29~03/01)

「鳥帰る」

鳥帰る鳥インフルエンザなるもあり

鳥引くや我(われ)が秘密の飛来地を

鳥帰る太刀打ちできぬ温暖化

コロナウイルス拡大中、敢えて梅を見に。

コロナウイルス拡大中、敢えて梅を見に。

        2020/02/25

        十河 智

 

 シンガポールへの大旅行、その後の学校薬剤師業務、それらのあとのコビッド−19、今年は梅を見に行けていない。
 梅は、庭に植えてある家も多いが、一木でも全体を見て趣がある姿と思うので、やはり広い庭園で、眺めてみたい。

梅を見に行かなくてはと言ふ日毎  

 

 いつもなら、京、大阪の北野天満宮大阪城、長岡天満宮、奈良の社寺、いろいろと出かけるものだが、ウイルスの状況を見ていて、自分は喘息持ちで、基礎疾患のある高齢者に当たるかなあと思うと、患者の発生地、人混みは、避けたいと、今は外出は控えている。
 フェイスブックのお友達で、城陽市に住む方が、近所の梅林に梅見に行ったと写真を上げておられた。綺麗。どこかはっきりとは知らないところだが、行きたくなった。
 一日経って、また別の城陽市在住の方は、市でのイベントがほぼ中止と残念な報告をしておられた。各地で、いろいろな集会やイベントがこんなふうに中止されている    
 寝屋川市も、昨日開催予定だった寝屋川ハーフマラソンもいち早く中止することに決めていた。うちのJR最寄駅である寝屋川公園駅(旧名、東寝屋川駅)が年に一度溢れんばかりに乗降客で膨れ上がる、寝屋川市にとっての大イベントである。多くの若者がボランティアとして関わっていて、知り合いにも、力に合わせて、短いコースを走る人がいる。この頃になると、出発地点の府立寝屋川公園やコースを脚慣らしするランナーをよく見かけるようになる。このイベントが目標になって、励みにしている人は結構いるように思う。残念なことだが、仕方がない。
 ただ、人が来ないのであれば、青谷梅林の梅を見に行ってみようかと思い立った。ナビを設定してみると、青谷梅林では出てこない。一応、山城青谷駅というJR奈良線の駅に設定、21キロと出た。第二京阪道路を使うと、970円、それほどの距離でもないので、側道で走った。
 途中、少し危険と思ったことに出会った。高速ではないが、車が故障したのか、一車線塞いで停車、運転手らしい若者が携帯で通報しつつ、片手で誘導している。車線の真ん中、止めてある車のま後ろにいる。彼の位置が危ないと思った。発煙筒と三角の赤い標識、あれを使うべきだ。
 往きは30分くらいで行け、駐車場もすぐに見つかった。横の青谷小学校は駐車場へ帰ってくるときの目印になる。3時過ぎだった。
 管理の人が梅林までの地図をくれた。梅まつりの旗を目印に歩けと言われた。旗の並ぶ道筋までは、田んぼの畦を通る。この辺りは、普段高速道路から見ると、低い丘陵と農地が多く、見通しの良いところだが、その丘陵に梅林があった。

やむを得ぬイベント中止梅の花
都鄙朧梅のほのかに匂ふ里  

 

駐車場には、管理人以外に人はいなかった。もう一台入ってきた。その人たちも夫婦連れ、どこに行っても良く似た人たちと遭遇する。会釈で挨拶を交わし、先に行ってもらった。
 田んぼは、まだ枯れ色で、葦や蒲、薄が立ち枯れている。ゆっくりと畦の左右をを見ながらいくと、とびとびに小さい緑が萌え始めていた。踊子草、犬ふぐり。小さな花が踊り、笑いかけてくれた。
 小さな橋を渡ると、道が整い、古い集落がある。梅まつりの旗は、端が擦り切れていて、いかにも鄙びた風情である。もう37年目とネットで紹介されていた。庭に梅を植えている家もおおい。所々の塀に矢印とポスターがあり梅林へ導いてくれる。
 旗に従っていくと集落を抜け、丘に上がっていく。何区画かの畑地が開け、耕して冬菜を作っている。収穫なのか、農婦が、しゃがみこんで仕事をしていた。ここにも区画ごとに何本かの若い梅の木が花を咲かせている。
 各種のイベントは今日はあったのだろうか。
 ネットのポスターには中止のお知らせはなく、梅林にもさしたる掲示は見当たらない。
 梅林は三々五々と梅を見る人は来ていたが、地元の人は入り口で一人梅干しを売る人がいただけ。屋台も畳まれたままの何か所かが見受けられた。帰りがけの人が梅の枝を持っていたのだが、売っているような気配はない。もう少し早く来れば良かったかも知れない。
 梅はそれぞれの木で咲き方はいろいろであった。一つ一つをゆっくり見て回れた。老木の太く黒い枝に、目を奪われる、つぶらな一輪があった。艷やかで、張り詰めている。可愛らしくて健気に見えた。この一輪だけで、ここに来た甲斐があった。
 分かれ道になっていた。奥にもう一つ梅林がある様だし、ひょっとしたらそこが見せ場なのかもしれない。だが地図には急な坂と書かれていた。もう一方は緩やかに下りで、帰り道に繋がっている。梅あるところに天神さん、中天満神社が道筋にある。
 もう大分歩いている。急な坂は行けそうにもないと、下りを取ることにした。神社を通り過ぎると、集落のごく細い道に入る。昔はこうして寄り添って生きていたという日本のどこにでもあった鄙の佇まいである。
 往きに見た畑があったが、農婦はもういなかった。見晴らせるので、青谷小学校はよく目立つ。車に乗り込んだのは、4時過ぎ、ほぼ一時間歩いた。

コビッド−19閑散として梅
梅まつり旗に沿へよと地の農夫
急坂とあるこの奥にまた梅林
しみじみとつぶらに咲ける梅一輪
梅匂ふ奥にひつそり天神社
梅が枝を土産に戻る駐車場  

 

 駐車場のおじさんが、前の出にくい細い道への誘導をしてくれた。ナビをまた一般道に設定。5時頃には着く予定だった。
 ところが、第二京阪の側道は、帰宅時間帯で、京田辺付近で、高速から降りてくる車が多く、大渋滞。その辺りに連続するトンネルを抜けるのに30分以上かかった。運転の主人が、坂なので用心のため、いちいちサイドブレーキを引いている。「だから俺らは日曜は動いたらあかん。なんぼでも時間はあるのに。」とぶつくさ言う。横を高速のサァーー、ザァザァーと、軽く過ぎ去る車の音が行く。いつものパターンなのだが、この渋滞は予想していず、気の毒だった。よく知る地域なのだが、高速の側道は抜けた先がどこなのかわからなくて、他の道も選べなかった。
 6時には家に着けた。まだ宵の口でよかった。私は行ってよかった、大満足の一日であった。7時のニュースでは、またコロナウイルス関連の感染拡大を報じていた。

高速に乗れば良かつた春夕焼
渋滞の側道遅き日でありぬ
春灯す街トンネルを抜け出せば  

女子会すき焼きと吉田神社の鬼やらひ

女子会すき焼きと吉田神社の鬼やらひ(2020年2月2日)

          2020/02.06

          十河 智

 

一 すき焼き

 2月2日、高校の同窓生女子会9人が、吉田神社の氏子の仲間の家に集まった。去年も集まったのだが、あいにくの雨だったので、鬼やらいには、残らなかった。それが残念だったとまた誘ってくれた。
 12時少し前、出町柳駅集合だったが、私は早く着き過ぎた。ラインで連絡取り合うようになっている。「駅ナカのスタバにいる」と連絡しておいた。「スタバってどこ?ロッテリアしかないけど。」と返ってきた。「ごめん、ロッテリアだった!」最近年のせいかよくこういう間違いをする。
 8人で、タクシーに分譲、交通規制があるので、南側の近衛通りへ入ってもらい、近くで降ろしてもらう。
 お昼はすき焼きを会費千円で、その家で鍋を囲んで食べた。女子会は楽、みんなで用意し、みんなで作り、みんなで食べて、みんなで片付ける。おやつは持ってきて、というので、色々と集まって、私は、静岡の深蒸し茶を持っていった。家の主が誕生日と知る人がいて、花束贈呈。これは喜んでくれた。サプライズだからかと。

今駅とラインで告げて春隣
竈猫スタバでなくてロッテリア
すき焼きや九人で囲み和やかに
たつぷりと冬菜を入れよ水を出せ
みかんチョコフィナンシェそれに会費入れ 

ニ 吉田神社節分祭

 4時頃、吉田神社へ向かった。人通りは、新型コロナウイルス騒ぎで、中国や韓国、タイなどアジアからの団体がいない。少し前の時代の日本のまつりの風景が戻った感じ。隙間が少しあり、ゆっくり歩ける程度の混雑であった。
 自治会の奉納で神楽を見られるというので、そちらに向かう。その前に、家で豆まき用にと、福豆を授けてもらう。吉田神社で豆まきはない。鬼やらいと、お焚き上げが節分の儀式である。福豆を頂いたあと、神楽を奉納のところで、すぐ前に、舞台衣装の役者が3人、お神楽の舞台の前に並んでいた。年増女、渡世人、町人、見たところ、大衆演劇かなという衣装、振る舞いであった。私の住む寝屋川の成田山にも豆まきの歳男、年女として芸能人はやってくるが、こんな近いと、どきどきする。
 まだ5時、追儺まで1時間あったが、それでも、5列目くらいで待っていた。初めから解説と音だけで、雰囲気だけ味わう覚悟だった。仲間で一番背の高い人に写真を頼んで、ラインで見せてもらうことにした。
 立って持つのは辛いとひとり帰っていった。私も、動かずに立ったままはすごく辛く、膝から下が、ビリビリ痺れて、かなり危ない状態になっていた。踏ん張って指先だけでもと動かしながら、待った。上弦の月が出ていた。日が暮れ始めるとくっきりきれいな形になっていった。解説が始まった。
 神事が始まると、子供は肩車され、高く差し上げられて、お父さんに実況し始める。私達後ろの列の者も、ちょっとこの頃らしい、現象によって、行事をかなり楽しむことができたのだ。なぜか。
 前の方の人が、一斉にスマホで写真やビデオを撮るために、最高に手を上に伸ばして後ろの私達にその画面を見せてくれるという、後ろの人への功徳になっている。あちこちの画面を眺めて、大体の神事の経過がわかった。
 30分ほどで終わった。足は棒のようで、どこかで休めないと、とても歩けなかった。人の列を縫って、警備の人の詰め所の辺りに座り込み、ふくらはぎや足先を揉んだ。これから深夜に行われるお焚き上げにやってくる人たちと入れ替わるように、警備員や警官も出動する時間帯で、慌しそうだった。
 なんとか持ち直して、東大路のタクシー乗り場まで歩いた。出町柳駅まで付き合ってくれる友達が一人いたが、駅で、特急に乗って乗り換えながら行くというので、急行と特急に分かれて乗った。その人のほうが少し大阪よりに住んでいる。結局一人で、今日は全く触っていないスマホを見ながら帰った。

大学の道様変はり節分祭
節分祭人の程よき隙間かな
福受けて我が家の鬼を退治せむ
福豆や咽を傷めてゐる人も
ウイルスを追ひ払ひたし鬼やらひ
吉田神社神楽奉納せし役者
追儺式見たきや人の立ち尽くす
ありありと上弦の月日脚伸ぶ
暮れゆくを待てば赤鬼青鬼が
追儺待ち脚の痺れの窮まりぬ
その位置で子供を高く挙げ追儺
スマホその映像の鬼やらひ
大舎人陰陽師殿上人古式の追儺
抜きん出る背の高さや追儺の矢
足弱の脚揉むところ冬蝗
人の隙抜けてぞ眠る山降るる
おのづから最後に一人冬果つる 

三 豆まき

 2月3日、夜更けに、二人の豆まきをした。玄関と台所の入り口だけにしたし、昔ほど大声で叫んだりしていない。でもちゃんと「鬼は外、福は内」と呼ばわった。
 
授かりし福豆を撒く翌夜更け  

句帖を拾ふ(2020/01)

句帖を拾ふ(2020/01)

      2020/02/01

      十河智

 

1

明けましておめでとうとふホテルロビー 

’'A Happy New Year! "' in Japanese;

in a hotel lobby of Singapore 

 

2

元日
New Year"s Day

元日にゴーン出国とふニュース  十河智
a breaking news on New Year"s Day;
a getaway from Japan of the accused SOGO Tomoko

元日やシンガポールのシーサイド  十河智
New Year"s Day;
spending a seaside holiday of Singapore SOGO Tomoko

 

3

今年もどうぞ宜しく
娘たち一家とシンガポールに来ています。暑いくらいです。
お正月を気楽に過ごしています。

明けましておめでとうとふホテルロビー  

'A Happy New Year! "' in Japanese;
in a hotel lobby of Singapore 

 

4

元日の日本語ばかりセントサに

On the New Year"s Day at Sentosa, Singapore;
listening many Japanese conversations

シンガポール、大晦日はホテル間移動、元日はシーサイドのセントサで水族館、二日は植物園、今日、三日はマリーナベイサンズ。もう帰る日になりました。

 

5

オリオン
Orion

オリオンや護られている心地して
Orion;
I feel like I have a guard
オリオンの変わらぬ勇姿我老いぬ
a strong Orion not changing over time;
an old person l am

 

6

吹雪
snow storm

身を覆うもの翻し吹雪かな
the advance;
making the body cover billow in the snow storm
南国に育ち吹雪の実知らず
no knowledge about the real snow storm;
being raised in the south

 

7

北風
north wind

北風や高さ制限ある京都
north wind;
Kyoto City has the limit on the building height
北風の荒びリア王彷徨ふ野
a stomy north wind;
the wilderness King Lear wandered 

 

8

初時雨
first light rain

初時雨ホームシックに陥りて
first light rain;
getting homesick
三畳一間一人の窓や初時雨
alone in a cramped tatami room;
first light rain from the window

 

9

悴む手生体認証認知せず  十河智
my fingers being too numb;
the ATM with bimetric can"t recognize me SOGO Tomoko

冬になると一番困ることがこれなのです。暖冬のせいで、手袋はタンスの奥。でも手指の先まで血が巡ってないようです、今回も5回ATMに拒否されました。擦って擦ってようやく通してくれました。

 

10

席題2020年01月第三週

大寒

大寒の句会帰りや傘寿とふ

大寒やポンポン山に暗き雲

大寒や光る店名焼杉に

 

11

hail

 

霞立ち開(はだか)る山を越え行きぬ

 

the mountain standing in my way ;

going over it in haze

山霞む行けどまた行けど山霞む

the mountains in our way are hazy ;

the mountains ahead of us are also hazy

 

12

frost

 

一面の霜の白さよ広き野よ

the whiteness of the frost all around ;

a large plain

夜の霜我が足音のひたひたと

the frost at night ;

I hear my footsteps in stillness 

 

13

冬の山

winter mountain

 

冬の山越えて白川郷に入る

going 

over the winter mountains ;

going into the Shirakawa Distinct

冬の山脱輪事故の手助けを

a car into a ditch in a winter mountain ;

in the spirit of mutual help

 

14

枯野

withered

 

例ふればシャッター街も枯野かな

a withered, figuratively speaking ;

shopping street of most shutdown stores is

思ひ切り犬走らせる枯野かな

Let the dog run thoroughly;

a withered

 

15

大寒やタクシー拾ふ御堂筋  十河智

 

the coldest season;

picking up a taxi

 on Midosuji st. SOGO Tomoko

 

昨日は冷え込んでいた。御堂筋沿いの銀行に用事があって、その後、いずみホールでのコンサートに行く。喘息の具合が良くないので、京橋からはタクシーを拾い拾い行くことにした。食事をしたい「OBP」が思い出せず、運転手さんを困らせた。

 

16

春節やキャッシュレス対応タブレット  十河智

Chinese New Year ;

a tablet for making cashless payment SOGO Tomoko

タクシーにキャッシュレス払いに対応したタブレット端末が設置してあり、目新しかった。

 

17

席題2020年01月第四週(01/25~01/26)

「蝋梅」

蝋梅や少し日当たる園の道

蝋梅の艶燦めきに見入るかな

蝋梅や風土記の丘に遊び事(すさびごと)

 

18

hawk / falcon 

 

鷹駅に放つや烏来ぬやうに

let a falcon loose at the station ;

not let crows be in the station

山間につと青空や鷹一羽

a grand broaden blue sky surrounded by the mountains ;

a hawk(01/28)

 

19

冬景色

winter landscape , winter scene

 

ものはみな動かず閑か冬景色

stillness all around ;

winter landscape

冬景色古人(いにしへびと)の大和かな

a winter scene ;

Yamato of the ancient people(01/29)

 

20

水涸る

bottom of the river seen under the frost

 

水涸るや鳥の集まリ来て突き

the bottom of the pond seen under the frost ;

many birds are coming to peck

水涸るることも良きかな滝の道

a good scenery of the coldest season, isn't it?

on the way to see the bottom of the basin of a waterfall 

(01/30)

 

21


ice

子供らの燥ぐ氷の池となり
children are romping around on ice ;
the pond
わくわくと氷の厚さ測りけり
an thrilling time ;
measuring the thickness of the pond ice