人生の節目に掛かる

人生の節目に掛かる       

     2023/03/16 

     十河 智

 一昨日、孫から電話があった。弾む声で、高校に合格したと伝えてきた。遠く離れて暮らすので、その県の高校事情は全く知らないのだが、志望校には、入れたようだ。少し遠くて自転車通学になるという。

 娘は結婚も子供も遅かった。と思っていたのだが、過ぎてみればもう、その息子たちがこんな歳に成長している。人生なんてそんなものだ。時は静かに確実に過ぎて行き、この孫が生まれたとき、結婚式を見ようと思ったら八十まで生きなくてはと言っていたことを、思い出す。何のことはない、もうすぐそこのところにいる。齢は取ったし、少し頼りなくなってきているが、まだまだ生きていける。孫が高校生活をエンジョイして、彼女の話でも聞かせてもらえたら、この上なく幸せだろうと思っている。

 夫も私も運転は八十歳までと決めている。もう四年ほどで、住処を移さなければ、暮しがここでは成り立たない。見渡してみると、あの家も、この家も、まだ運ている。

 住宅街の中は、老夫婦二人暮らし、または,親と結婚していない子供のいる二人か三人の世帯ばかり。築五十年以上の家ばかり。私達が子供の頃は、三世代同居が普通で、家族は多かったのだが、そんな家はこの住宅街には、多分一軒もないだろう。

 それでも最近、世代交替が始まって、全財産を整理して老人ホームや介護施設へ入居する人がでてきた。その後に、売れた土地は、家の解体、更地化、新築、というパターンで、若い人たちの明るくおしゃれな家が建つようになった。

 私達も娘のいる土地の近所に移り住むことを考え始めた。昔、友人の親が、友人のところへ食事をしに通う暮らしをしていたのを思い出す。そんな生活をしてみるのもいいかと、考え始めた。

 もうその時なのだと思っている。ただ夫婦は二人、片方がまだそこまでと思っていず、説得してまで、移り住む必要もまだない、というのが現実で、実際に動くのは、まだ先になりそうである。

 

卒業と合格告げて弾む声

自転車通学となる一年生

白壁の新築桜古木咲く

運転を止められぬ町春の池

決心の移住近きや春の雨