緊急事態宣言下、府立寝屋川公園を歩いてみた。      

緊急事態宣言下、府立寝屋川公園を歩いてみた。

        2021/05/05

        十河 智

 

 世の中は、変異株コロナへの入れ替わりで、蔓延防止にやっき。緊急事態宣言が再発出された。
 日日家に籠もっている。いつもは気楽な二人暮らし、お昼はどこかへ出かけて刺激をもらうことにしていた。
 二人とも、行くところがなくなった。
 主人の将棋クラブはせっかく再開が決まっていたのに、公共施設の全面閉鎖で、やめになった。陶芸クラブも相変わらず音沙汰がなく2年目になった。消えてしまう可能性もある。
 私は、お友達が子どもたちに教える書道教室の脇で、千字文と仮名散らしを習っている。選などで採って貰えた句や、気に入りの句は、お手本を書いてもらって、自筆の短冊や色紙で残す。字に自信がないので、お手本が必要なのだ。そんな大事な書道教室も、今回の変異株は子供も危ないというので、しばらく休むと連絡が来た。

 ほんとに、どこへも行くところがなくなった。もともとゴールデンウィークなど意識にもない暮らしなのに、若者達は渋谷へ、難波へ、嵐山へと相も変わらぬ人出と報じていて、感染は収まらない。少し気持ちにゆとりがなくなりかけてきた。
 近所には散策できる公園が何か所かある。
 昔は湿地帯で水害も多かった、寝屋川水系には、治水緑地が整備されていて、平時には近所の住民の憩いの場である。近くに2ヶ所ある。
 府立寝屋川公園も今ようやく完成に近づいて来た。こういうところは、何十年もかかると、はじめから見ていてやっとわかった。

 寝屋川公園を歩こうということになった。桜の頃にはよく行くし、子や孫を連れて、噴水や人工の川、芝生の上で遊ばせたりもした。今は施設は利用できないが、各所にベンチや椅子、床几が置かれていて、疲れが出やすい私にも良さそうだ。存分に青葉若葉の空気を吸いたいと思った。
 すぐ横にあるコンビニでコーヒーと柏餅を買って、桜の木の下の床几に広げた。桜の実が可愛く揺れている。あまりそういうことに興味のない夫に指差してやる。外でのコーヒータイムをしばらく楽しんでいると、夫は「少し歩こう。」という。
 あまり人はいなかったが、たまに同じようにコンビニ弁当のカラを持って帰る人がいたり、老人夫婦や、父と幼児の組み合わせもいた。ゴールデンウィークの真ん中という感じだ。乳母車でくる人を覗くと、犬が2匹乗っていてびっくり。まともに赤ちゃんが乗るベビーバギーにも会ったけれど。
 会館とかバーベキュースペース、野球場はすべて利用休止の張り紙。木の間に立て看板で、県の形から県名を当てるクイズが並んでいた。これが、案外忘れていて難しい。北の方はよくわからない。
 公園の真ん中あたりになる広場が見えるところに来た。丸い大きな花壇があって、周りに座れとばかりに、スツール型の黒い石、不規則な置き方なのでオブジェなのかも知れないが、一休みさせてもらった。いつも車で通る道が見えている。周囲を見渡すと、噴水も止めてある。従って川も流れていない。春の落葉が掃かれずにそのまま積もっている。多分、出勤も停止しているのだ。
 帰りの道は少し変えてみた。「烏がこのあたりのどこかで子育て中だから、親烏の気が荒い。」との注意がある。私達は、会わなかった。
 上を道路が走るトンネルがあって、その道路に出ようと潜り抜けて、出口を探した。出たところはコンビニと道路を隔てたところだった。
 小一時間の散歩だったが、いい気分転換になった。

 

コンビニで買ふコーヒーと柏餅
指差すはくすめる空の桜の実
少し歩こう夏の変種のクリスマスローズ
コロナ禍の散歩コースの春落葉
緑陰に遊ぶ県当てクイズかな
ネモフィラの青いつぱいのプランター
初夏の花ベビーカーには犬二匹
黒石の椅子にて拭ふ汗ありき
みどりの日娘に父のよーいどん
全施設利用休止や烏の子
親烏注意と掲示ある欅
トンネルの上が車道で若葉風
葉桜の下抜けをして帰りけり