花鳥風月を楽しみつつ、老後である
2022/09/10
十河 智
1 染めた菊を生ける
グラジオラス、ワックスフラワー、スプレーマム(染め)
この菊の淡いピンクは染めているらしい。表示に(染め)とあった。昔の様ないかにもインクを吸わせて染めました、というような不細工な加工ではないが、どこかに人工的な生き物としては不自然な色ではある。
これはスーパーで花束として売っていたもので、ピンク以外に青もあった。隣で若い男の子が連れの彼女に「菊の花、珍しい青いのがあるで。買おうか。」と言っていたが、手にとって、染めたものとわかると、止めていった。
9月になったし、菊を飾りたかったので、自然の白と染のピンクの入った2セットずつを買った。組み合わせはグラジオラスとワックスフラワーのどちらかであった。
スーパーの売り方はだいたいこういう花瓶に投げ入れていい塩梅の嵩張らないセットものである。私は、床の間に見合うボリュームを考えて、いつも4、5束買って帰る。
お花は、道の駅など生産者に近いところや、ちゃんとした花屋さんなど、買うところで、それぞれの選び方買い方があって、その段階から楽しい。
そして長い遠出のドライブで買ったものでも、その後きちんと手順を間違えずに扱うと花器の中で生気を取り戻す。その生き返った姿は、花に褒められたようで、とても嬉しい。
2 家を売る
話は変わるが、今うちのキッチンにはものが犇めいている。
若い頃調剤薬局を開局していた。店舗の2階では、昼食を取ったり、休憩してお茶を飲むダイニングキッチンになっていた。薬局を閉じてからも、店舗はきっちり片付けたが、2階は、夫の避難場所?として、また私のご近所さんお好み焼きパーティーの、気を使わない開催場所として、10年位そのままキッチンであった。
年老いたので、このセカンドハウスを仕舞して、売りに出すことにした。3階建てだが、荷物があるのは2階だけであり、片付け屋さんは一日かからず、10万円以下で片付けてくれた。うちに入る不動産販売のチラシで、売りたいと電話して、今売ってもらっている。店舗付住宅なので長くかかるかもしれない。
まあ成り行き任せである。
そのうちに運転ができなくなり、本宅にも住めなくなる。現に住宅街では、チラホラと世代交代で、老人世帯は出てゆき、家が壊されて、新築にかわり、若い人たちが子供連れで入ってくる。
他人事ではない老後がここにある。
3 月を眺める
さあ、外に出て月でも眺めてこようか。住宅街の東の端、池の端。月を眺めるにはいいロケーションである。
重陽や現代の色染めて菊
重陽や染の菊なる加工して
秋夕日仕舞ひし家の湯呑かな
家二つ湯呑二つの暮らし秋
名月や明日は晴れると予報あり