手近にまとめ、のんびり暮らす

手近にまとめ、のんびり暮らす

        2023/05/18

        十河 智

 先日、銀行に記帳に行った。実は主人の実家の古くからの取引銀行、中国銀行に毎月入る土地の利用料があり、北河内圏内には、中国銀行の支店が一つもないので、何ヶ月かに一度大阪の中心部まで、記帳のために出かけ、また、まとまった額になると、住居近くのいつも使う銀行の口座に振り替える、ということを、ほぼ五十年くりかえしてきたのだ。だが、最近気づいたのだ、振り込む方は会社で、振込先の変更など頼めば簡単にやってもらえるだろうということに。もうすぐ八十歳、車の運転をやめるつもりでいる。今でももうそうなのだから、そんな歳になったら、電車を乗り継いで、地下鉄の深い階段や、隅っこにあるエレベーターを探して都心との往復をするのも大変なことに違いない。そうなる前にと思っていた時、振込先を変えて貰えると、繰り返しになるが、ほんとに最近、気づいたのだ。電話するとすぐに用紙を送ってくれた。それに必要事項を記入して送り返したら、翌月から振込先が変わる。「なあんだ、これだけ。」って感じである。それで、今回、確認の記帳、だったのだが、もう一つ先の「来月」からのようだ。まあこのぐらいのタイムラグは仕方ない。

 一度確認できたら、今うちが主に使っている銀行は、高松に支店がないので、中国銀行の口座だけは、故郷への送金用に置いておくが、残高は、引き上げるつもりである。ふるさと讃岐では、忘れられない「うまきもの」が多く、弟に頼めるものやお取寄せがあるものはつい買いたくなるのだ。中国銀行が振込先に入っていることも多く、そんなとき、手数料が安くなり、助かる。「おいおい、電車賃が?」と言われそうだが、都心へせっかく行くのだから、繁華街やデパートにも寄って帰り、ちゃんと電車で行く意味を持たせるようにしているつもり。まあなんと言い訳しようとも、高松で銀行といえば、百十四銀行中国銀行なので、使うことがないかも知れないが、捨てがたい郷愁が募るのである。口座はそのために残すのだ。 

 実はこの貸している土地は、地続きのやはり駐車場の持ち主から、広げたいので譲ってくれないかと持ちかけられた事がある。だが親が譲ってくれた、しかも幼き日のチャンバラごっこの思い出がある土地で、主人は手放したくないようだ。もしもの時を考えなくはない、相続税などどうなるのかな。と思いつつ、そのままである。なるようになる、娘が負担なら、手放せばいい。と思っているが、わたしたちは手放さない。八十歳から年金も減額となった。この地代は足しのなる。

 少し前には、昔、店をしていた店舗付き住宅を売却した。整骨院になって、看板や外壁が変えられていた。少し寂しかったが、朽ちさせなくて良かったと、再生される家を見て喜んだのではある。

 普段の暮らしは、のんびりの老後で、買うものもない。食費が賄えればそれでいい。毎日、新聞の数独を写し、主人と競う。大体が勝つが、今日は負け。 

 

何に付け手近が良きや夏暑し

運転のやめ時のこと新樹光

相続の次への思案夏始め

毎日の数独を解きアイスクリーム

手放して改築中なる夏館