昨日より今日、老いている

昨日より今日、老いている

          2022/10/29

          十河 智



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 物忘れではないけれど、ふっと書類の間につっこんだ俳句の投句葉書二枚重ねが、そのところに見つからない。一枚一枚捲りながらの確認を何度しただろう。こんな不思議な神隠しのような出来事があるのかと気持ちが収まらず、今ももやもや状態である。

 「俳句界」11月号で2人の選者が佳作に採ってくれた句がある。

 

氷水京のホテルのティールーム

 佳作 今瀬剛一選

 佳作 角川春樹

 

 このことがとっても嬉しく、雑誌に投稿に、これまで以上に乗り気になっていたところだった。さあ今月も投句しようかと、句を用意したのだが、その投句用の葉書が行方しれずになった。幸運がここで途切れた気がした。

 もうあれから何日も立つのだが、思い出したように、ノートや書類をまた繰っているのだ。ぴったり二枚重ねのあのはがきは今どこに挟まっているのだろうか。

 どうも最近こういうことが多い気がする。

 まだ予定を忘れたりの不義理をしたり、いつもの句会の投句を忘れたりはないのだが、忘れる寸前まで行くときがあるのだ。今まではカレンダーは、最後の確認程度だったが、今はこれに書いておくことが必須、書いておかないと、忘れてしまうかもしれないのだ。記憶力。随分と低下していると思う。忘れるというより、邪魔、雑念が入り混じってぼやける。頭の中で、予定が、ざわざわしている感じがしている。 今までのように、さらっと物事が進まない。例えば、何かを取ろうとしたとき、何かを始めるかと一歩踏み出すとき、「あんたそれでいいのかい?」と、横から聞かれている気がしてならない。それで行動が出遅れる。

 こうして、高齢者運転免許書換え時の認知症検査を受ける年齢にもなり、少少

認知機能の衰えも自覚があるということ、どんな状態だったかを書いておくことも、のちの自分のためであろうかと思う。確実に昨日よりは今日、今日よりは明日、老いているのだから。

 気を取り直して花を生ける。スーパーで買った竜胆、色が混ざっていた。菊が一本だけあった。うろ覚えながら、生花の形に調えた。花束として花瓶にぽんと入れる体裁の売り方なので、満足できる生け上がりとは言えず、いかにも突っ立っている感で仕上がった。花が開けば少しは見栄えが上がるだろうか。花はいい。触っていると気持ちが安らぐ。水揚げがうまく行って生き返るのを見ると、とても嬉しい。

 

 

投句葉書秋を灯してまた探す

暦買ふ書き込み欄の大きめを

雑音の多き脳内秋深し

水の秋吸い上げてまた生きる花

大輪の菊一輪や華やげる