うちにやってきた本たち 4

うちにやってきた本たち

        2021/05/29

        十河 智

 

4 句会で一括購入した虚子の本

「進むべき俳句の道」

 著者:高浜虚子
角川ソフィア文庫

 


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 この本の解説を、
俳人のキャラクターと句風の関係の面白さ」と題して、私が属する3つの「ゆう」の流れを汲む句会の選をしてくださっている岸本尚毅さんが書いておられる。そんなことから、2つの句会でまとめて買うことにしたのだ。2冊になれば、どなたかに差し上げてもと、思っていたのだが、一か所だけで、もう一か所は在庫がなくて手に入らないといってきた。好評な本のようだ。まあ、私としてはダブらなくてよかったのだが。

 前に読んだ「俳句の五十年」も、同じルートで家にやってきたが、高浜虚子が最晩年に自分の俳句人生を回想、口述したものを起こした本で、これも、岸本尚毅さんが解説していた。これは2冊になったので、作らないが俳句が好きという友人にあげた。この本も、とてもおもしろかった。虚子の、話し言葉で語られる思い出話の雰囲気が忘れられないでいる。

 話を戻そう。

「進むべき俳句の道」

 ホトトギス雑詠欄
から作家を選び、論評することで、これらの句によって、暗示されている筈の、我等(と虚子は書いている。)の進むべき新しい道を、探ろう、というのである。
 虚子は、選者によってその道が唯一つ、一本道に定まるようなものでもない、という。
「作った人は、同一人で無いのだから、仔細にそれを調べていったならば、その各作家にはそれぞれの特色があって、一見似寄ったような句と見えたものにも、争うことのできぬ異色を認めるようになる。」
「雑詠は雑詠という一団としてはある一つの方向に進み来ったものともいえるのであるが、その中にある分子分子は各々異なった本来の性質を持ってそれぞれ歩趨を異にしているのである。」
「この雑詠評では、こういう方向もある、ああいう方向もある。こんな道もある。あんな道もある。というふうになるべく種々雑多の違った道を指定してみようと思う。」
「諸君の進み来った道は諸君の進むべき道である。」 

 虚子のこのような考え方が、この本には貫かれていると思うと、嬉しくなる。なんと柔軟な指導者なのかと、目を覚まされる思いであった。ここに挙げられた32人の作家にはそれぞれの諸君の道がある、それを私、虚子が、読み解いて探してみようではないか、というのである。

 時代が明治から大正の作家たちなので、よく知っているという人はいない。聞いたことがある程度の人も、そう多くはない。しかし解説で、岸本尚毅さんも、「本書は読み物として抜群に面白い。」と書いている。まだ拾い読みをした程度であるが、俳句の言葉選びに見える人柄など、捉え方が独特で、俳句をどういうふうに感じ取って読み込むかということも教えてもらえそうである。 
 私のように、良い俳句の読み手となりたい人間には、とても良い指南書であると思う。時間をかけて、ゆっくりと、読んでいこうと思っている。

 帯にも、「愛溢れる名俳論」と言っている、そういう言葉で表されるこれはとても魅力ある本である。虚子の心を感じる本である。