句帖を拾ふ(2021年2月)
2021/03/01
十河 智
1
火事
fire
火事あれば大体老いの家であり
a fire ;
almost starting from a house of elderly persons
赤子抱くつもりの枕火事の父
a father at the scene of a fire ;
a pillow instead of a baby in his arms
2
追儺総理大臣切々と
節分の豆はピーナツ鬼の面
二週間分、大量に買い込んで、一日中、ご飯と俳句作りで過ごしています。ポストまで歩くのも、この寒さではしんどくて、散歩もままなりません。温度差のないところで、ゆったりと暮らしています。卵や牛乳などの買い足しは主人が行きます。今日スーパーで節分だからと太巻き寿司とピーナッツを買ってきました。巻き寿司、とても丸かじりできないので、切ってみたら鯖でした。先に抗ヒスタミン剤を飲んでおいて食べました。今様子を見ています。わかっているようで、わかってない。(鯖はアレルゲンなので、好きだけど食べないようにしているんです。)
二人なので、気を使いながら、暮らしてます。
また会える日を楽しみにしています。お元気で。(友達へライン)
3
春の山
spring mountain
嫁入りの友を祝ふや春の山
spring mountain ;
congratulating a friend of mine on her marriage
春の山木木の騒めき始まりぬ
spring mountain ;
the buzz of tree leaves begins
4
春嵐
spring storm
引き籠もる窓の外なる春嵐
spring storm out of a window ;
social withdrawal
刻薄な言葉を浴びる春嵐
callous words spoken to me ;
spring storm
5
2月第1週
〜席題で一句〜
猫柳(ねこやなぎ)
猫が好き山道行けば猫柳猫柳
雑木林に光るもの猫柳
生けて意外な自己主張
6
牡蠣
oyster
日生とふ馴染の産地牡蠣嬉し
happy to get the oysters of the familiar place ; Hinase
大粒の牡蠣面倒でもフライ
large oysters to be deep-fried in the end ;
too much bother to cook
7
2月第2週
〜席題で一句〜
薄氷(うすらい《うすらひ》)
薄氷や母に見せんと急ぎしか
井戸端の春の氷や顔洗ふ
薄氷墓地抜けていく山の道
8
2月第3週
~席題で一句~
蜃気楼(しんきろう)
リモートの余儀なき世なり蜃気楼
友と集ふ大きテーブル蜃気楼
蜃気楼夢追ひかけて老いし今
なにもかもコロナ禍に失せ蜃気楼
オンライン旅行の画面蜃気楼