令和2年7月のこと

令和2年7月のこと

         2020./7/26

         十河 智

 

梅雨が長くてとても鬱とおしい。片付けも途中で、前に進まない。

 句会も夫の陶芸や将棋もなかなか始まらない。

 外が暗くて、コロナ感染拡大は日毎。

 

 緊急事態宣言後から、最近の出かけない日常を書いてみた。

 

 家にずっと引きこもり、テレビを見たり、なんとなくあまり糸で小物を編んでみたり、古い着物をリメイク、ちょこちょこっとできるマスクは足りるくらい作った。主人の浴衣を解くので、まだ子供の甚平くらいはできるかと、本を買って来て、用意はしたものの、手がついていない。もうすぐ7月が終わり、季節が移りかけているというのに。

 弟や義姉、嘗て仲人となった主人の会社時代の後輩、桃や故郷の海の幸が届けられた。娘婿からはふるさと納税を利用してうなぎやお米が届く。うちのインターフォンが鳴るのは、そんな宅配のときだけ。気に掛けてくれる人はみんな遠くて、今は、ありがとうと電話することが、唯一外との繋がり。

 行動が自由だった頃には旅先の珍しいものを頃合いを見てお返しにしていたものだが、こちらからは、このへんで美味しいと評判のお菓子屋さんのゼリーの詰め合わせくらいしかお返しにするものを思いつかない。

 月日も早く進み、一週間もまたたく間。火曜日は、仮名文字のお稽古日、そこだけが区切りのように、またやって来る。先生は友人で、弟子は私だけ。子供の弟子は孫。だからほぼ続けてお稽古はやってくれている。

 千字文山家集百人一首を適当に書いている。読める様になるのが目的なので、漢字は三書体を同じ字で書く。墨の香が心地よいことも続く理由かと思っている。

 先生の家は、本格的に菜園で野菜作りをしていて、帰りはお土産の茄子やトマトが渡される。他には道の駅での調達などで、野菜は取り立てが冷蔵庫に入ることが多く、ある意味贅沢をしている。

 他の食材も、冷蔵庫が空になるまで頑張って、また一杯にするくらい買い物をする。これも回数を減らす工夫で、いつの間にか身についた。

 たまに、お昼をファミレスやうどんチェーンに行くが、このごろはどこも、お持ち帰りというのが、用意されていて、自粛解除後も続いているようである。つい最近行った「さと」で、うなぎの弁当が美味しそうだったので注文しようとタブレットをとった。が、該当の物がない。聞くと、お持ち帰りのみ、別口になっていた。ただ、持ち帰りなら、うちは、スーパーの惣菜コーナーのほうが、お買い得のようで、レストランのこういうのを利用したことはない。

 

 俳句の月刊雑誌は、「俳句」「俳句界」「俳句四季」3冊、月極めで取っているものだが、もう次の号が来る頃になっている。

 ぱらぱらとめくり、気になる特集記事と作家の作品を読む。インターネットを通しての知己の方々、現俳の方々、結社や句会の句友たち、3冊の中に、作品を寄せられていて、読み応えはある。

 また、投稿はがきもいつからか欠かさず出すようになった。そのときに作り置いた句の中から選んで、それぞれの投句はがきを投函する。何ヶ月か後、あるかないかわからないほどの最小の文字のところを探す。それも楽しみになってきている。そこに、インターネットで知り合ったお友達がパッと花が咲いたように大きく目に止まると、とても嬉しい。その方が多いのだ。

 月日と同じく、雑誌も流れて去っていくものと思っている。

 7月号の「花壇」は、永田和宏さんの「ウイルスとの向き合い方」という記事が読みたくて、特別に注文してのだが、思いがけなく、ハイクコラムでお知り合いになった歌人、櫟原聡さんの短歌に、大フアンである俵万智さんの新作の短歌にも出会えて、ラッキーな気分が味わえた。

 「波多野爽波の百句」は、山口昭男さんが抄出、解説しておられる新刊として、麦笛句会よりの紹介の本であるが、ちょうど「俳句界」七月号の波多野爽波特集の岸本尚毅さんの抄出百句があったので、見比べたりして楽しんでいる。

 

 寝屋川市では、少ないけれど、学校でもコロナウイルス感染が出た。これまでもだったが、これからも、学校での感染対策はとても重要になる。先生方の相談には、適切な回答で応えて、感染拡大防止に協力したい。

 

 最後にひとつ、遅れていたが、7月から始まったドラマ「アンサング シンデレラ」、もしよかったら見てみてください。ドラマなので、物足りなかったり、大袈裟でありえないところもあったり、まあ、文句はあるのですが、真面目に仕事をする病院薬剤師のほぼすべてのタイプの人が出てきていて現場感は最高に仕上がっているかなと思います。原作は業界紙の連載とのことですが、私もどこまでドラマにできているか興味深く見ようと思っています。

 

 

梅雨の闇疑ひ募る認知症

流し吹くどこにメモせしパスワード

梅雨晴間藤井棋聖となりたる日

将棋観る夫に白靴履かせけり

黴雨にて整理の本の重きこと  

 

梅雨時雨けふも夕暮れ時に降る

これでもか洪水コロナ土砂崩れ

天の川星ではなくて水滴の

梅雨の月暴れる川を宥めねば

汗拭ふ余力はありや日本に 

 

凌霄花あまり好きでもなきに花

屁糞葛花の少なきころの花

芝生にはよく雨が滲み茸数多

腐し切る山法師花今日も雨

黃のカンナ元気貰ふに物足りず

 

桃が来て直後の電話美味しいか

山梨の桃続いては岡山の

県境を越へては行けぬ桃を剥く

果物を丸ごとゼリー詰め合わせ

都会より贈る名店桃ゼリー 

 

梅雨寒の首の周りに巻く網目

五月雨や服の思い出残る糸

浴衣リメイクもう七月も終る頃

土用の日また火曜日のお稽古日

コロナ禍の土用鰻の持ち帰り