コロナ緊急事態宣言解除後の女子会

コロナ緊急事態宣言解除後の女子会
          2020/07/04
          十河 智

 コロナの緊急事態宣言直前に、お花見の計画があった女子会。それが流れて、今回自粛解除となったので、対策を十分取ったレストランで、会おうということにした。年に一回の一泊旅行と、お花見や紅葉狩り、京都の四季や行事を楽しむ企画をしてくれる人がいて、9人のメンバーでよく会っている。
 久しぶりのお出掛けとなるので、前夜は早起きするための早寝。
 京都へは半年ぶりくらい。木屋町二条のがんこ寿司。お庭がとても良いところ。がんこ寿司は土地の古い庭園付きのお屋敷を作り変えてお店にしているところが多い。
 京阪電車の各停で、混まない座席に乗って京都へ行った。直ぐに寝てしまって、市内に入るまで気づかなかった。
 三条駅はここが京阪本線の終点だった頃の賑わいは地上にはなくなっている。乗換もすべて地下で行われるようになった。学生時代、よく利用していたときと全く趣が変わり、私にはいつ来ても違和感がある。
 駅から歩いても近いのだが、楽しい会話に息が上がってもと思いタクシーに乗る。賀茂川の川床(ゆか)は既に設えられていて、涼しげだが、営業はしている様子ではなかった。今年は祇園祭も神事以外はすべて取りやめ、送り火も縮小されるということで、京都から夏の賑わいが消えている。いつもならこの頃聞こえる祇園囃子練習の笛太鼓があるのだが、それも全くなくて寂しい。
 店に着くと、9人が8人になっていた。幹事が言うには、昨日の晩十時頃に、子供のない姉夫婦が二人とも具合絵悪くて、自分が助けに行くと言って、急遽のキャンセルとなったらしい。今は飲食店も早めに閉店するので、幹事は、昨日の夜は、直接話ができず、ファックスでその由流しておいたので、来るまでとても心配だったと、事情を語った。
 巨大なテーブル、8人席について、ちょうどいい社会的距離である。話はゆっくりと、控えめな声で。お料理もランチの豆腐のコースで良い分量であった。出入口は開いていたが、庭の方も少し開けて、風を通した。
 10月の旅行の話、自粛中は、マスクやリフォーム、家でご飯づくりの良き主婦だったという話。体が運動不足で鈍ってきていて、スーパーに行くのもしんどいという話。いつものことである。うちと同じ、夫婦二人暮らしの人ばかりなのだ。孫も子供もしばらく行き来がない。断ち切られている。
こうして会っていても、どこか空気が重い感じがあった。店の従業員も同様で、緊張感が漂っている。
 集まって、心置きなく楽しむ、お客さんを迎えて、心の底からおもてなし。そんな昔にいつ戻れるのだろうか。
 ラインで、ズームで、が、よくわからない。またスマホ決済で、といわれても、ついていけなので、新しい暮らし方において置かれる不安も私と同様に感じている。マイナンバーカードも、持っている方が少なく、今回もみんな郵送の給付金申込みだと言っていた。私達を置いてけぼりにしないで、と叫びたいような空気があった。
 食事をして、庭を見せてもらい、記念に写真を撮って、他の人は、河原を歩くというので、私だけ主人にお土産の穴子の棒寿司を買い、外でタクシーを拾った。
 人生の一里塚として、ここで、この8人で会ったことは良かった。

うきうきとたまの早起き菖蒲咲く
京都へと京阪に乗る梅雨晴間 
六月尽街マスク率百パーセント
ほぼ昼寝各駅停車早七条
祇園祭今年中止の京閑散
夏の天三条地上駐車場
木屋町へ溽暑のタクシー乗場かな
コロナ禍に設へ終へし川床(ゆか)列ぶ
夏料理コロナ対策卓巨き
皆少し老いて再会夏の服
冷房と開放の窓風ニ様
短夜の予約変更ファックスで
老老介護そのまた介助青嵐
談笑の声控え目に半夏生
実梅など仲良き夫は荷物持ち
いただきぬ自家に朝採りせし胡瓜
皆少し老いて真夏の庭巡る
土産にと会計のとき穴子
背景は名庭園の緑かな
歩く人残しタクシー流し吹く
あといくつ一里塚建つ蝸牛