老人話3題

老人話3題
          2019/11/23
          十河智


 高松へ帰る時に立ち寄るホテルビュッフェで、入るときに聞かれました。「65歳以上はシニア料金ですが、どうでしょうか?」と。「二人ともそうですが、証明するもの見せますよ。」「お聞きするだけで結構です。」
そう言って入ったが、サービス以上に、食欲の方が沸かなかった。

元取れぬシニア料金温野菜 


 お金を自分の口座間で移そうと振り込みをATM でしようとした。
 振り込み元はあまり日頃使わない口座で、生体認証でないキャッシュカード、限度内の額で、最後まで行くのに、振り込めない。三度、ダメだった。
 振り込み先銀行のATM だったので、そこに聞くと、エラー番号で、振り込み元の銀行が振り込めないように制限を掛けていると言う。私の知らないところでそんなことあるのかと、また、生体認証でないことが理由なのか、高松の口座を作った銀行に事情を聞きにやって来た。
 カードに問題はないといい、他行の機械でも振り込めるはずだと言うので、少額の振り込みで目の前で操作をやってみた。最後のところまでいって、いざ振り込むと、できなかったと言うと、係りが思い当たったのか、そこで止めさせて、裏へ確認に行く。帰ってきて今更のように聞く。
「70歳、越えてらっしゃいますよね。」
「越えてますよ。」
「70歳を越えられた方は、うちでは、振込みはできないように、自動的に設定されているんです。お申し出によって解除できますが、もう一度制限を掛けられなくなります。」
 振り込め詐欺対策だった。銀行によって、違う対策のようだが、親切が行き過ぎ、聞いてからにするべきだと思った。あまり追求せず、必要だからと、制限を解除してもらった。

七十歳以上に縛り冬ざるる  


 ほんとに年を取ったとき、知らない土地だけど娘のそばに行くか、どちらも弟がいる高松へ帰るか、で悩んでいる。こうして帰省し、弟たちと話すと、高松がいいなと思う、が、誰が先に行くとも限らない。やはりわたしたちのたよりは、娘や孫なのだと思い直す。寝屋川に一生は住まないことだけ確かである。

老いて行く身の置き処日向ぼこ